『コード・ブルー』成功の理由は“妥協なき追求”にあり? 劇場版ヒットの必然性を解説

『コード・ブルー』を成功に導いた妥協なき追求

 しかし、どれだけ宣伝量が多くても、作品の世界観を壊しては台無しだ。そのため統一されたイメージを打ち出すためのクオリティ・コントロールが必要となる。宮崎駿や細田守のアニメ映画は宣伝における統一感があり、それが強固なブランドイメージを作り上げ、観客にとっては信頼の担保となってきた。『コード・ブルー』もそれは同様で、テレビシリーズからの統一された世界観とブランドイメージを打ち出してきた積み重ねが、劇場映画のヒットへとつながったのだ。

 これは、プロデューサーの増本淳の力だろう。増本にとって『コード・ブルー』は初の単独プロデュースとなる作品だった。プロデューサー補の時代に『白い巨塔』、『救命病棟24時』、『Dr.コトー診療所』(全て、フジテレビ系)といった医療ドラマを手がけた増本は、そこで得た経験を元に『コード・ブルー』の企画を立ち上げた。

 『コード・ブルー』で増本が最初におこなった仕事は、ドクターヘリを中心としたリアルな医療ドラマの世界を作り上げるということだった。そのために綿密な取材をおこない医療監修の医師との意見交換を重ねてきた。その上で、フィクションでしかできないエンタメ作品を作りあげた。

 言葉にすると単純だが、これを徹底することは、とても困難なことである。面倒な手続きを一つ一つクリアしていく増本の妥協なき姿勢が本作の完成度を高めている。それは監督の西浦正記も同様である。

 1st seasonからチーフ演出を務めている西浦は、『コード・ブルー』の医療場面はドキュメンタリーのようにリアルに撮り、ドクターヘリの飛ぶシーンはロボットアニメのようなケレン味たっぷりに描いており、そのリアルとフィクションのバランスは絶妙である。

 同時に彼らの作品には、独自の毒っ気がある。本作で言うと、フライトナースの雪村双葉(馬場ふみか)の母親(かたせ梨乃)がアルコール依存症となって登場するシーンはショッキングだが、同時に「気まずい笑い」とでも言うようなブラックユーモアもあり、単純な感動大作では終わらない奥深さとなっている。

 つまり増本Pと西浦監督の妥協なき追求が、『コード・ブルー』を成功に導いたのだ。

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