『BANANA FISH』アッシュはなぜ女性に支持される? 「#MeToo」運動にも関連する生き方を考察

 昨年から、ジャーナリストの伊藤詩織氏やブロガー・作家のはあちゅう氏による「#MeToo」などでの告発を筆頭に、女性へのセクハラや性被害をさらに問題視する動きが高まっている。しかし、彼女たちへはもちろん、一般人の「#MeToo」運動に対しても、いまだに心ない声が数多く寄せられているのも確かだ。女性である筆者がそんな状況を傍目に見ていると、なんだかそれだけでも“諦念”に苛まれてしまう。きっと、多くの女性はこうした“諦め”を抱きながら、日々の生活を送っているのではないだろうか。

 こうした諦めの感覚は、男性にはなかなか理解されにくいものかもしれない。だが、アッシュは男性でありながら、我々女性と同じサイドに立っている。理不尽に性を搾取されることへ嫌悪を示し、それに抗いながらも強くあろうとする彼の姿には、女性だからこそ大いに共感してしまうのだ。

 アッシュは容姿端麗だが、ただ「強くてかっこいい」、「かわいそうな過去があるから応援したくなる」といったタイプの主人公ではない。女性が自分の姿を重ねられるような存在で、さらに、多くの女性が抱えているのと共通した苦悩を背負いながら彼は生きている。そうした類まれな立ち位置にいるからこそ、女性たちはアッシュというキャラクターに惹かれてしまうのだろう。

 余談になるが、文庫本では巻末ごとに著名人によるエッセイが掲載されている。坂本龍一や渡辺えり子など、錚々たる面々でどれも大変秀逸な内容なのだが、盛大なネタバレを含むエッセイもある(筆者は初見でみごとにその地雷を踏んでしまった……)。これから文庫本で原作を読もうと考えている人は、必ず最後まで読破してからエッセイを追うようにしてほしい。

■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。Twitter

■放送情報
『BANANA FISH』
フジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜24:55から放送
Amazon Prime Video にて日本・海外独占配信
声の出演:内田雄馬、野島健児、平田広明、石塚運昇、古川慎、細谷佳正、川田紳司、福山潤、千葉翔也、斉藤壮馬、森川智之
原作:吉田秋生『BANANA FISH』(小学館 フラワーコミックス刊)
監督:内海紘子
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:林明美
総作画監督:山田歩、鎌田晋平、岸友洋
メインアニメーター::久木晃嗣
色彩設計:鎌田千賀子
美術監督:水谷利春
撮影監督:淡輪雄介
編集:奥田浩史
音楽:大沢伸一
音響監督:山田陽
アニメーション制作:MAPPA
(c)吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH
公式サイト:https://bananafish.tv/

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