『BLEACH』は弱腰の実写界隈に一石を投じる作品に 『GANTZ』に共通する佐藤信介監督の演出

『BLEACH』は実写界隈に一石を投じる

 しかし例えば2005年に大ヒットを記録した『ALWAYS 三丁目の夕日』のように作品の世界をまるっとVFXで作ってしまったり、はたまた『シン・ゴジラ』のようにリアルな実景とリアルな人間たちの中に混入してくる“異質”なものを作り出し、あくまでも“異質”なものとして画面に映し続けるときには、それが“作り物”だという先入観を飛び越え娯楽性を生み出すだけの、映画としてのパワーが生じる。

 決して画面になじませようとせず、“何か変なもの”が画面の大部分を占める恐怖。何の変哲も無い夜の住宅街で突如として現れたり、巨大なオープンセットで築き上げられたこじんまりとした駅前のバスロータリーの中央で暴れまわり、さらには住宅街の公園でのストレンジな出で立ち、林道や河川敷で少女の背後からぐわんと現れていく様。まさに佐藤監督が『GANTZ』で行ったのと同じ方法論だ。マンションの一室に鎮座した黒い球体であったり、夜の街に突如として現れる“星人”たちのように、物語の設定上説明はされておきながらも、現実では容易に受け入れることのできない“異質”なものを、ヴィジュアルの強さでねじ伏せる。

 原作が「漫画」であるという強みを活かしながら、観客に媚びることなく作り手の見せたいものを見せたいように見せる。その堂々とした姿勢もまた、作られるたびにどんどん弱腰になっていく日本の漫画実写映画化界隈に、一石を投じる作品となったことを証明していると感じずにはいられない。ところで、最後の最後でタイトルに「死神代行篇」の文字が重なるということは、興行次第では「尸魂界篇」も視野に入れられているのだろうか。もしそうならば、とんでもない作品が観られるかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『BLEACH』
全国公開中
出演:福士蒼汰、杉咲花、吉沢亮、真野恵里菜、小柳友、田辺誠一、早乙女太一、MIYAVI、長澤まさみ、江口洋介
監督:佐藤信介
脚本:羽原大介、佐藤信介
音楽:やまだ豊 
原作:『BLEACH』久保帯人(集英社ジャンプ コミックス刊 )
主題歌:[ALEXANDROS] 「Mosquito Bite」(UNIVERSAL J / RX-RECORDS)
製作:映画「BLEACH」製作委員会
制作プロダクション:シネバザール 
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)久保帯人/集英社 (c)2018 映画「BLEACH」製作委員会
公式サイト: bleach-movie.jp

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