安藤政信が語る、メジャー作品にもインディーズ作品にも出る理由 「振り幅として考えると面白い」

安藤政信が明かす、役者としての意識の変化

「最近はもう、無責任に楽しんじゃえばいいのかなって」

ーー安藤さんは映画のみに出演している時期や中国で活躍している時期もありましたが、最近は『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』シリーズなどメジャー作品にも出演していますね。何か役者としての意識の変化があったりしたのでしょうか?

安藤:断るのも面倒くさいからやってみようかなと思っただけで(笑)。これまで、役者仲間から直接「こういう企画があるんだけど、どう?」と言われたりすることもあったんです。20代とか30代の頃は、人付き合いもあまりしたくないし1人でいたいから、本当にやりたいことだけをやっていた時期もありました。でも、30代後半ぐらいからガラッと気持ちを変えて、自分を必要としてくれていることに対してもっと寛容的になって、何でも受け入れてやってみたいなと思うようになったんです。

ーー実際にいろいろやるようになって、得るものも増えてきたと。

安藤:もちろん全ての作品が10割なんてことはあり得ないですけどね。自分がやった作品で本当に良かったなと思えるものもあれば、そうでないものもある。でも、やる前に断って経験できないよりは、どういう結果になろうと実際にやった方が確実に感情的には豊かになると思うんですよね。

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ーー映画やドラマ、メジャーやインディーズなども関係なく?

安藤:そうですね。でも、大きい作品の方が面白い感じはしますよ。例えば、『劇場版コード・ブルー』を観る人たちの中に、矢崎さんやツァイ・ミンリャンの作品を観る人がいるかといったら、ほとんどいないわけじゃないですか。逆に、矢崎さんやツァイ・ミンリャンの作品を観る人たちが『劇場版コード・ブルー』を観たら、「え?」と思うかもしれない。そういうことも含めて、振り幅として考えると面白いなって。今までは本当に1年に1本ツァイ・ミンリャンの作品だけに出たり、真面目に考えすぎて立ち止まったりしたこともありましたけど、最近はもう、無責任に楽しんじゃえばいいのかなって。『劇場版コード・ブルー』も『スティルライフオブメモリーズ』も、同じ映画で、同じ映画人で、同じ業界なのに、実際は全く違う、別次元なわけですよ。そのどちらにもハマれる自分は単純に面白いなって最近本当に思うんですよね。

ーーそう思うようになったのには、何かきっかけがあったんでしょうか?

安藤:最近、竹中直人さんと同じ事務所に入ったんですけど、その影響は大きいですね。竹中さんは本当に仕事を選ばずに、来た仕事をちゃんとやる。それがプロフェッショナルでカッコいいなと思ったんです。インディーズ映画だって選ばれた人にしかできないわけですけど、テレビに出たりメジャー映画に出たりするのは、それ以上に選ばれた人にしかできないわけで。大衆的な作品の方が責任感は強いんです。テレビドラマにしたって、“わかりやすい芝居”が求められるわけですけど、それって実はものすごく難しいことなんです。だから誰に何と言われようと、自分はどっちも大事にしていきたいなと、今はそう思ってやっています。

ーー安藤さんがメジャーとインディーズの架け橋的な存在になるかもしれませんね。

安藤:そうなるといいですよね。わかりやすく提供するのがドラマやメジャー映画だとしたら、今回の『スティルライフオブメモリーズ』は本当にどう話したらいいのかわからないような作品で。観た後に「あれどうだった?」と誰かと話し合えるのが映画だなと思うんですけど、僕はこの作品を観て、本当に「映画っぽいな」と思ったんですよね。脚本を事前に読んでいる自分も展開が読めなくて、まるで北野武監督の『3-4X10月』を観ているような感覚でした。自分たちが90年代にやってきた映画って、こういう作品が多かったなって。

ーー確かに90年代的な懐かしさは感じました。

安藤:分かりやすい映画に慣れている人がこの作品を観たら、もしかしたら意味が分からなかったり、すごく退屈だと思ったりするかもしれません。それでも、風景と時間と空気を楽しむ、“感じる映画”になっていると僕は思うんです。例えば、京都に行って借景を見て感動するのと同じような感覚かもしれません。庭は何も説明してくれないけど、そこで風が吹いたり、池の波紋が広がったりすると、表情が変わった印象になる。その瞬間瞬間を、まさに写真のように切り取って、107分に繋げた映画だと思います。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『スティルライフオブメモリーズ』
全国公開中
監督:矢崎仁司
脚本:朝西真砂、伊藤彰彦
原作:四方田犬彦『映像要理』
出演:安藤政信、永夏子、松田リマ、伊藤清美、ヴィヴィアン佐藤、有馬美里、和田光沙、四方田犬彦
制作:プレジュール、フィルムバンデット
配給:スティルライフオブメモリーズ」製作委員会
(c)Plasir/Film Bandit
公式サイト:http://stilllife-movie.com/

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