今見るべき“親の背中”がここにある 綾瀬はるか主演『義母と娘のブルース』が描いた“普通”

『義母と娘のブルース』が描いた“親の背中”

 “親の背中”は次の世代にも受け継がれる。そして、“普通”は変えられないのだと、その思い込みはさらに強くなっていく。今、私たちが「なんでこんな風になっているのだろう」というものは、たいてい“誰かの背中”でしかないのだ。しかも、それが本人にとってもベストな状態ではないこともある。コンプレックスを隠すために着込んだ鎧姿が、“その人の背中”になっていることに気付きもしない場合も。

 きっとPTA会長は亜希子にキャリアウーマンとしての自分を、亜希子はPTA会長に完璧な母親を、どちらも自分にはないコンプレックスに近いものを感じたのだろう。自分が持っていないものを持っている相手と出会ったならば、お互いの手を取り、足りない部分を補い合うことが理想だが、それは“普通”なかなかできない。

 その“普通”を壊すには、きっと悔しい思いや、恥ずかしい思いをしなければならないのだ。今の日本社会に取り巻く鬱憤とした雰囲気は、きっと誰よりも自分たちが自分自身の恥を恐れているからできあがったように思う。「恥をかかせないで」と言われて育ったからだろう。だが残念ながら、それでも人は恥をかくものだ。わからないことは恥を忍んで聞くしかないし、やったことがないことは恥をかく覚悟でやってみるしかない。もちろん、誰もが最初から成功するわけがない。だからこそ、その恥から他者へのリスペクトが生まれるのだから。真正面から失敗していくこのドラマこそ、私たちが今見るべき“親の背中”なのかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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