『虹色デイズ』は青春映画として目を見張る出来栄え “平成最後の夏”に放つ輝きと郷愁感

『虹色デイズ』は目を見張る出来栄え

 各キャラクターのディテール、メインカップルの馴れ初めともに不完全でありながらも、何故か青春映画として目を見張る出来栄えになっているのは、「高二、春」から始まるひとつひとつのシーズンのスライスが重ねられ、根本的なコンセプトから折れず、そして過剰に膨らまさないという判断の賜物であろう。

 原作からある、男子高校生の友情と青春に女子たちの視点をきちんと織り交ぜながら、なっちゃんと杏奈の恋愛をひたすらに見守る。そして高校時代の恋愛に特有の、「友情」があって初めて成立する「恋愛」というものを、ドラマティックさよりもリアリティを求めて描き尽くしてくれているのだ。映画に必要なのは説明ではなく、いかにその物語に誘なうかという点にあるのだと、改めて実感してしまう。同じ男4人、女3人で紡ぎ出されたジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』に匹敵する、誰もが“誰かしら”と自分自身を重ね合わせて観てしまわずにはいられない、完璧な青春群像が出来上がったといってもいいぐらいだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『虹色デイズ』
全国公開中
出演:佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、中川大志、高杉真宙、横浜流星、吉川愛、恒松祐里、堀田真由、坂東希(E-girls/Flower)、山田裕貴、滝藤賢一
原作:水野美波『虹色デイズ』(集英社マーガレットコミックス刊) 
監督:飯塚健
脚本:根津理香/飯塚健
音楽:海田庄吾
エンディング・テーマ:「ワンダーラスト」降谷建志(ビクターエンタテインメント/MOB SQUAD)
挿入曲:フジファブリック/阿部真央/Leola/SUPER BEAVER
企画・配給:松竹
(c)2018「虹色デイズ」製作委員会 (c)水野美波/集英社
公式サイト:nijiiro-days.jp

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