綾野剛が体現する人のカッコ悪さと愛しさ 実にアッパレな映画『パンク侍、斬られて候』

綾野剛が体現する人のカッコ悪さと愛しさ

 何が正解かわからない状況に困惑し、強き者を恐れ、美しき者に絆され、感情のままに振り回されながらも、狂いきれもせずにもがく。その無様な姿は、人が生きるということそのものなのだろう。綾野剛の男前な色香はもちろんのこと、悪戦苦闘しながら汗を流す男臭さ、ゾッとするほど残酷な眼差しの血生臭さ……と、スクリーンからこれでもかと人間臭さがたちこめる演技が、人のカッコ悪さと愛しさを強調する。ちなみに、村上淳いわく綾野剛の股間からは夏を告げる石鹸のような香りがするそうだ。ああ、なんてくだらなくて、いい作品なのだろう。大真面目に人の業と向き合った大人たちが、行き着いたカオスで、この上なく人臭い映画。この作品を愛でることが、とっくに“終わってる”この世界を生きていく小さな希望になる。

(文=佐藤結衣)

■公開情報
『パンク侍、斬られて候』
全国公開中
監督:石井岳龍
脚本:宮藤官九郎
出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司
原作:町田康『パンク侍、斬られて候』(角川文庫刊)
配給:東映
(c)エイベックス通信放送
公式サイト:http://www.punksamurai.jp/

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