中村雅俊はなぜ“歌い続ける”のか? 『半分、青い。』仙吉が抱えていた深い傷と濃い闇

『半分、青い。』仙吉はなぜ歌い続けるのか?

 それに加えて、まだ28歳の鈴愛ならまだまだ人生の選択肢は無数にある、心配するな、という思いがひしひしと伝わってくる。そう、今の時代なら、食べたいものを食べ、遊びたいときに遊び、観たい映画を観て、読みたい本を読み、熱中したい趣味に打ち込み、そして何より、歌いたい歌を歌うことができるのだ。第53話で、草太(上村海成)に仙吉の青春時代の歌を歌ってくれとせがまれるのだが、「おじいちゃんの青春時代の歌はろくなもんなかった。あんまり好きやなかった。軍歌とか」と言って、仙吉は結局サザンオールスターズの「真夏の果実」を弾き語る。そして、歌い終えると、「こんな歌がおじいちゃんの青春時代にあったらよかった。そしたらじいちゃん、廉子さんに、おばあちゃんに歌ってやった」と呟く。ご存知のように、「真夏の果実」のようなラブソングは軍歌と対極にある現代の歌であろう。自分の好きなように生きられるのだから、しっかりとそれを謳歌しろということを、仙吉は身をもって示してくれる。

 これまでも晴(松雪泰子)と比べると、宇太郎(滝藤賢一)同様にどちらかというと鈴愛の側に立ってあげることが多かった仙吉。ただ、それは単に楽観的で能天気ということではまったくなく、過去の経験によるものが大きかったことが伺い知れる。今後も鈴愛が困難に見舞われたときには、仙吉は確かなアドバイスをしてくれることであろう。

(文=國重駿平)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊、上村海成/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳/間宮祥太朗、斎藤工、嶋田久作、キムラ緑子、麻生祐未、
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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