オダギリジョーが語る、“少し異質”な演技論 「『役になりきる』という言葉は大きな勘違い」

オダギリジョーが語る、“少し異質”な演技論

「“感覚をいかに使うか”という方法論を学び、やり続けてきた」

ーー御子と悟郎の関係も、映画の軸になっていると思います。池田エライザさんとはどんな話をしてたんですか?

オダギリジョー:役のことではなくて、池田さんのこれまでの人生についていろいろ話を聞いたんです。「その役者さんがどういう人生を送ってきたか」ということに興味があるし、それは感性の部分だったり、引き出しの多さにもつながってることなんです。そういう意味で池田さんは十分に面白い人生を送ってこられて、表現者としても伸びしろの大きい方だと思います。

ーーどう演じるかよりも、人間性や経験が大事だと。

オダギリジョー:もちろんそうですね。どんな役であっても、その人が根本的に持っているものしか出てこないと思うので。「役になりきる」という言葉がありますけど、あんなの大きな勘違いですよ(笑)。そうじゃなくて、その人自身の感性と役柄をいかに繋げるか、繋げた時に何が滲み出るかーーそこで役者としてやっていけるかどうかが決まるので。池田さんの感性には期待してしまいますね。

ーーでは悟郎にもオダギリさん自身の何かが滲み出ている?

オダギリジョー:そうだと思います。と言うのも、僕は“感覚をいかに使うか”という方法論を学び、やり続けてきたので。日本の演技論からすると少し異質だとは思いますが。

ーー完成した『ルームロンダリング』を観たときも「自分の判断はまちがえてなかった」と思えた?

オダギリジョー:想像以上におもしろかったです。監督がやりたかったことが具体的に見えたし、僕がイメージしていたのは表面的なことに過ぎなかったんだなと。僕は監督になりたい気持ちが強かったから、「もし自分が撮るなら」ということも考えるんですけど、「なるほど、片桐監督はこうしたかったのか」というものが随所に見えたんですよ。カメラワークや編集を含めて、監督自身のアイデアがしっかり感じられたし、それを可能にしたスタッフもすごいなと。こういう作品を制作したTSUTAYAさんも素晴らしいですよね。

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ーーオリジナル脚本の映画の数は決して多くないですからね。

オダギリジョー:危機的状況ですよね、それは。新しい感覚を持った才能が表に出てこられなくなるんじゃないか? という危惧もあるし、このままでは日本の映画がダメになってしまう気がして。そういう意味でもTSUTAYAさんの意志はすごくありがたいし、これからも続けてほしいなと思います。

(取材・文=森朋之/写真=伊藤惇)

オダギリ ジョー (1976年2月16日 -)/俳優 
岡山県津山市出身/身長176cm
アメリカと日本でメソッド演技法を学び、2003年、第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された『アカルイミライ』で映画初主演。2004年、『血と骨』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。近年の出演作に『オーバー・フェンス』『湯を沸かすほどの熱い愛』『エルネスト もう一人のゲバラ』など。公開作に『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』(声の出演)8月24日公開。TVドラマ『チア☆ダン』(TBS系 毎週(金)後10:00~ 7月13日スタート)『イアリー見えない顔』(WOWOW 毎週(土)後10:00~ 8月4日スタート)

■公開情報
『ルームロンダリング』
7月7日(土)より新宿武蔵野館、渋谷HUMAXシネマ、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー
出演:池田エライザ、渋川清彦、伊藤健太郎、光宗薫、オダギリジョー
監督:片桐健滋
脚本:片桐健滋・梅本竜矢
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント
配給:ファントム・フィルム
2018年/109分/日本/カラー/DCP/シネマスコープサイズ/5.1ch
(c)2018「ルームロンダリング」製作委員会
公式サイト:roomlaundering.com

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