長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生の大人の色気が彩る 『空飛ぶタイヤ』三者三様の魅力

『空飛ぶタイヤ』を彩る大人の色気

 そして高橋が演じるのは、ホープ銀行の本店営業本部に務める井崎一亮という人物。週刊誌の記者・榎本優子(小池栄子)からの接触を受け、グループ会社であるホープ自動車に対して彼もまた疑問を抱く存在だ。

 今年の高橋は、参加した映画の公開がこれで4本目。とある過去を抱えた男を演じ、長澤まさみとともに極上のラブストーリーを作り上げた『嘘を愛する女』にはじまり、斎藤工の初長編監督作に主演した『blank13』、チェン・カイコーの絢爛豪華な世界に吹き替え声優として身を投じた『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』、そして本作と、なんともバラエティ豊かなラインナップである。今作での高橋が演じる井崎は、長瀬、ディーンと比べると出番が少ない。しかし詳述は控えたいところだが、彼もまた本作の“大逆転劇”のキーマンであり、穏やかな表情に穏やかな物言いで、赤松らの追い風ともなる銀行員を飄々と演じ上げている。出番の多少にかかわらず、ほかの2人に並ぶ存在感を示すのはさすがというところ。さらに、本作の重苦しいトーンに、彼の飄々とした態度はある種の“軽さ”を与えている印象だ。

 期待の若手から大ベテランまでが名を連ねる本作で、その年齢、キャリアからして、彼ら3人はちょうど中堅どころといったところだろうか。同世代の3人である彼らだが、演じる役どころも違えば、その顔立ち、その声のタイプも違う。本作では三者三様の魅力を活かし、重厚感漂う演技を披露した。上映時間の120分間、一度も弛むことのない緊張の糸を張り、注目度の高い池井戸作品の初の映画化を成功に結びつけたのは、彼ら3人があってこそのものだろう。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『空飛ぶタイヤ』
全国公開中
出演:長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、岸部一徳、笹野高史、寺脇康文、小池栄子、阿部顕嵐(Love-tune/ジャニーズJr.)、ムロツヨシ、中村蒼ほか
監督:本木克英
原作:池井戸潤『空飛ぶタイヤ』(講談社文庫、実業之日本社文庫)
脚本:林民夫
(c)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会
公式サイト:soratobu-movie.jp

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