『モンテ・クリスト伯』が描いた人間の本質 作り手たちのエネルギーが詰まった最終回を振り返る

『モンテ・クリスト伯』が描いた人間の本質

 絶対的な正義なんてものはないのだ。“人として”という良心も、時代や社会の変化によって変わっていく。正義の名のもとに動くとき、人間は驚くほど残酷になることを歴史が教えてくれている。だが、平穏な日常を過ごしている私たちにとっては、少し遠くなっている感覚かもしれない。だからこそ、本作では目をそむけたくなるような、むごいシーンが続いたのだろう。殴られる痛み、何日も風呂に入らない臭い、石の床で寝る硬さや冷たさ……正直今の日本を生きる私たちには縁遠いものばかりだ。それほど、私たちは平和を“持っている”側にいることを忘れてはならない。第1話で「満天の星よりも都会のネオンがいい」と話したすみれ(山本美月)と同様に、幸せゆえに鈍感になってしまうことがある。そこを狙って、奪いにくる人もいる。私たちが生きているのは、そういう世界なのだ。

 「人間は変わりますから」(幸男)、「変わんねぇよ、根っこは」(神楽)という第4話
のやりとりは、決して答えの出ない問いだ。暖が真海になったように、人は変わることができる。だが、どこまでも自分の幸せを求めるという本質的には人は変わらないのかもしれない。自分の正義が砕かれても、死んだほうがマシだと思える悲しみに見舞われても、人生は簡単には終わらない。ならば、どんな気持ちで復讐心と立ち向かえばいいのか。「でも俺決めたんです。忘れることはできないけど、もうこれ以上縛られるのはやめようって。引きずってたら一生前に進めないですから」。次世代を生きる守尾信一朗(高杉真宙)のまっすぐな言葉が胸に突き刺さった。“光の導く方へ”とは、そんな希望の言葉を指しているのかもしれない。あなたの正義は、何か。それは誰かの影を作っていないか。それを振り返ったとき、本作のどんなトラウマシーンよりも、背筋が寒くなるかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■作品情報
木曜劇場『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』
出演:ディーン・フジオカ、大倉忠義、山本美月、高杉真宙、葉山奨之、岸井ゆきの、渋川清彦、桜井ユキ、三浦誠己、新井浩文、田中泯、風吹ジュン、木下ほうか、山口紗弥加、伊武雅刀、稲森いずみ、高橋克典
原作:アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』
脚本:黒岩勉
プロデュース:太田大、荒井俊雄
演出:西谷弘、野田悠介、永山耕三
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/MONTE-CRISTO/

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