初登場1位は『デッドプール2』 「アメコミ映画不毛の地」でもなぜデップーは受けるのか?

なぜデップーは日本でも受けるのか?

 もう一つ、作品の魅力として「アクション」と「コメディ」という、多くの人がアメリカのエンターテインメント映画に期待しているものを作品の「売り」としてわかりやすく全面に押し出して、実際にそれが確実に提供される作品であるということも大きい。これはアメリカ国内も含む海外での『デッドプール』人気の最大要因でもあるのだが、クリストファー・ノーランによる『ダークナイト』シリーズ以降、アメコミ映画における決定的なトレンドとなった「悩めるヒーロー像」のカウンターとして、『デッドプール』の軽薄なテイストはまさに多くの観客が求めているものだった。そして、それは「悩めるヒーロー像」が描かれた作品群が他国と比べてそこまで爆発的にはヒットしてこなかった日本でも、洋画ファンの間で潜在的に眠っていたニーズを掘り起こすことになったのだ。

 ちなみに、先週末はトップ10圏外となったが、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は先週末までの累計興収が36億2296万6200円。2012年に公開された『アベンジャーズ』の興収36.1億円を抜いて、日本のMCUシリーズ史上ナンバーワンの記録にようやく到達した。依然、海外におけるヒットの規模とはケタが一つも二つも違うとはいえ、来年春に公開される『アベンジャーズ』第4弾にしてフェーズ3と呼ばれる現在の一連のシリーズの最終作に向けての、最低限の地ならしはできたかたちだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『デッドプール2』
全国公開中
監督:デヴィッド・リーチ
出演:ライアン・レイノルズ、ジョシュ・ブローリン、モリーナ・バッカリン、ジュリアン・デニソン、ザジー・ビーツ、T・J・ミラー、ブリアナ・ヒルデブランド、ジャック・ケーシー
配給:20世紀フォックス映画
(c)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://deadpool.jp/

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