杉咲花、『花のち晴れ』ヒロイン役を好演! 周囲のキャラを際立たせる“媒介”としての演技力

杉咲花、周囲のキャラを際立たせる演技力

 コンビニの同僚(木南晴夏)を侮辱されたときに晴に向かって激怒した音の表情には、「怒り」しかなかった。「好きな人に対してこんな顔をするものかな」と思ったが、そこではそれが正解だったのだろう。そこから音の表情はぐんぐん変化していく。

 天馬を思うときの「ちょっと壁のある、穏やかで優しい愛」と、本人も自覚していない「晴といるときの思わずニヤけてしまう楽しさ・トキメキ」の対比が、セリフがなくとも、残酷なまでによくわかる。

 だからこそ、晴と天馬、さらに晴を思いつつ、音と友人になり、見守っている愛莉(今田美桜)も、晴に対して真っすぐ思いをぶつけてくるメグリン(飯豊まりえ)も、みんな一生懸命でいじらしく見える。にもかかわらず、肝心の音だけが「恋愛偏差値の低さ」と「鈍感力」によって、みんなをかき回しているように見えてしまうのだろう。

 最初は「ベタな少女漫画原作に演技派は必要なのか」と思ったし、「演技派の杉咲花に、学園モノのキャリアは必要なのか」とも思った。しかし、ベタな物語だからこそ、真ん中にいるヒロインの演技力によって、細かなセリフや演出がなくとも、周囲のキャラがどの場所にいて、どこを向き、誰を思っているのかが明確にわかる。

 「わかりやすい物語をわかりやすく見せる」上でも、杉咲花の非凡な才能は発揮されている。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『花のち晴れ~花男 Next Season~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:杉咲花、平野紫耀(King & Prince)、中川大志、濱田龍臣、飯豊まりえ、今田美桜、鈴木仁、中田圭祐、反町隆史、佐々木すみ江、デビット伊東、木南晴夏、堀内敬子、テット・ワダ、志賀廣太郎、高岡早紀、滝藤賢一、菊池桃子
原作:神尾葉子『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(集英社『少年ジャンプ+』連載)
脚本:吉田恵里香
音楽:大間々昂
主題歌:「シンデレラガール」/ King & Prince(Johnnys’ Universe)
プロデュース:瀬戸口克陽
協力プロデュース:齊藤彩奈
演出:石井康晴、坪井敏雄、岡本伸吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/hana_hare/
公式Twitter:@hanahare_tbs
公式Instagram:@oto_edogawa

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