井川遥、“わかりにくい優しさ”を丁寧に表現 『半分、青い。』物語のスパイスに

井川遥、菱本役のユニークさ

 菱本は、決して表情豊かなキャラクターではない。そのため、仏頂面と捉えられてしまうかもしれないが、そうではない。菱本は鈴愛が描いた「カケアミ(白黒漫画で疑似的に濃淡をつける技法。平行線をかけ合わせる事で表現できる)」の出来を見て、心の底からワクワクしているような、嬉しさと興奮が思わず滲みでてしまったかのような、魅力的な表情を浮かべる。理路整然とした話口調、冷静な仕事ぶりがゆえに表情が置いてきぼりになる菱本だが、そんな彼女を井川はユニークに演じているのだ。


 また井川は、菱本の「わかりにくい優しさ」を丁寧に表現する。菱本は、東京編において鈴愛をサポートする存在であることは間違いないが、彼女は困っている人に対し、簡単に手を差し伸べるタイプではない。しかし、「秋風のために」鈴愛が良い刺激になると信じてやまない彼女だからこそ、鈴愛の無茶なお願いにも応じる。「秋風にお礼がしたい」という鈴愛のために、秋風が大切にしている愛犬のアルバムをこっそり鈴愛に届ける。「あなたのためではなく、すべて秋風のためです」と話す菱本だが、その目には鈴愛に対する想いものせられていたように感じる。伏し目がちだが信念の強い目をもって菱本を演じる井川。今後鈴愛と接していくことで、また新たな表情を見せてくれることだろう。

 井川の美しさと、フリフリな衣装、独特な演技のミスマッチさが、秋風と若手アシスタントの物語の良いスパイスになっている。秋風のわがままを淡々となだめ、若手アシスタントのミスを冷静に対処する切れ者でありながら、回を追うごとに『半分、青い。』らしいコミカルさも露見しつつある菱本。東京編はまだまだ始まったばかりだ。「オフィス・ティンカーベル」の動向が楽しみである。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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