MCU10年の歴史に寄り添うアイアンマン 『インフィニティ・ウォー』に見るリーダーとしての成長

『アベンジャーズ/IW』アイアンマンの成長

 以上の背景を踏まえて、本作を観てみよう。今回のスタークは、ブルース・バナーとドクター・ストレンジが語るサノスの危険性にいち早く真剣に耳を傾け、仲たがいしてしまったロジャースに連絡を取ることを思案する。このシーンに過去の作品にあったスタークの自家撞着な一面は一切感じられない。彼は、自身の行動をしっかりと省みて、前へと一歩踏み出す意思を提示している。

 また本作では、スタークの魅力の一つであった、ウィットに富んだ軽口が極力抑えられている。観客のサーカズム的な笑いを引き出す会話劇にスタークが参加することがほとんどないのだ。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーやスパイダーマンという新しい面々にこの役割を任せ、ここ10年間MCUを引導し物語のメインストリームに深く関わり続けたスタークがシリアスに振り切ることで、本作のトーンを乱すことなく作品全体に重厚感をまとわせている。

『スパイダーマン:ホームカミング』より (c)Marvel Studios 2017. (c)2017 CTMG. All Rights Reserved.

 また、ピーター・パーカー/スパイダーマンとのやり取りも、前作『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)と比べ大人びた印象を受ける。『ホームカミング』の最後にて、パーカーを一人前と認めたスタークは、今作ではしっかりと保護者的な立ち位置を守っている。ニューヨークの乱戦の最中、駆け付けたスパイダーマンを戦力と認め加勢を許可、いよいよという場面で新しいスーツを授け離脱を促す。しかし、パーカーが独断で宇宙船に乗り込んでしまった際は真剣に彼の行動をいさめるという、理想的な父親像を見事に披露する。このシーンにも、かつてパーカーを子供扱いし適当にあしらっていたときの無責任さは全く感じない。

 劇中最後に映し出されるスタークの表情もまた象徴的だ。喪失を噛み締めたロバート・ダウニー・Jr.の渾身のワンカットにおもわず涙があふれ出てしまった。

 今作にて、想像がつかないほど多くのものを失ったトニー・スタークとアベンジャーズ。衝撃のラストにて語られた大きな試練が、いったい彼らをどのように成長させるのか。来年5月に公開が予定される『アベンジャーズ4(仮題)』が今から楽しみでならない。

(文=安田周平)

■公開情報
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
全国公開中
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、ドン・チードル、トム・ホランド、チャドウィック・ボーズマン、クリス・プラット
原題:Avengers: Infinity War/全米公開:4月27日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018MARVEL
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-iw/home.html

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