永野芽郁と佐藤健のすれ違いに、なぜ“グッ”とくる? 『半分、青い。』が描く感情の丁寧さ

『半分、青い。』が描く感情の丁寧さ

 こうしたすれ違いは恋愛ドラマではお約束であったが、今ではもうそれではグッとはこないことが多い。その理由は、我々がすれ違いのテンプレートに慣れてしまったこともあるし、よく言われることであるが、携帯電話などの発達により、すれ違いを描くことが難しくなったということもあるだろう。

 しかし、このドラマでは、「お約束」に違和感を持たせないことに成功している。その理由を考えると、舞台が80年代であることも大きいだろう。当時の高校生には、まだ恋愛のノウハウが普及しておらず、自分の気持ちに気づかないピュアさがウソ臭くみえない。また、実際に携帯電話がなく、連絡手段が公衆電話から自宅にかける通話であったり、家の下まで言って笛を吹くことであっても、おかしくない。こうした、年代的な理由ももちろんある。

 その上で、このドラマが鈴愛と律を、単に恋愛関係になる間柄として描いてないからこそ、もはや通常のドラマでは嘘くさく見えてしまうすれ違いにもグッとくるのではないだろうか。鈴愛と律の感情は、幼馴染だったからという説明はつくが、あきらかに鈴愛とブッチャーや、律と菜生の間にはないものがあるし、彼らもそれには気づいているけれど、それをどうすることもできない。そんな姿を、ふとした瞬間にうまく描いている。

 世の中では恋愛もののドラマはもはや受けないと言われているが、『半分、青い。』を観ていると、恋愛に限らず、誰かと誰かの間にある感情をていねいに描いているものへの関心は、まだまだ高いのではないかと思えるのだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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