FODプロデューサーが語る、配信ドラマ作りの仕掛け 「“胸キュンもの”が溢れるプラットフォーム」

FODがオリジナルドラマを作る理由

配信ドラマの世界では、“自主規制のハードル”を下げて作ることを意識

ーーキャスティングも、徐々に豪華になっています。

清水:たとえばWOWOWでドラマがスタートしたときも、キャスティングは簡単ではなかったと思います。それが、WOWOWのドラマは質が高いという評価がなされると、地上波ではできない硬派な作品を求めて俳優さんが出たいと思うようになった。配信のオリジナルドラマも、作り始めた頃に比べるとどんどん見直されています。「面白いことができる」と思っていただけるのはもちろん、ターゲットを絞っている分、俳優さんのプロモーション的に得だと思ってもらえている部分もあると思います。

『パパ活』(c)フジテレビジョン/エイベックス通信放送

ーー『パパ活』にはビッグネームの渡部篤郎さんが主演していますね。

清水:はい。渡部さんは、野島伸司さんの作品に出演したことがなかったので、野島さんの脚本なら出たいとおっしゃっていただいたところから始まりました。

ーー少女漫画原作が多い中、野島伸司さんにオリジナル脚本を依頼した理由を教えてください。

清水:この部署に来て間もない頃、配信だからできるドラマにするために、野島さんに脚本を書いていただきたいと思いました。今の地上波で野島さんの脚本で企画を出したとすると、自主規制もあると思いますが、だいぶ角を削ぎ落とされてしまうと思ったんです。つまり、野島さんの魅力が削がれてしまう。そこで、自主規制的なことはあまり考えず「配信でやってみませんか?」というご相談をさせていただきました。

ーー配信では地上波よりも尖った作品を作ることができますか?

清水:と、思っているだけでした。なぜなら、『パパ活』はその後、そのまま地上波で放送できたので(笑)。かつての地上波ではOKだったことが、今は絶対に「やめよう」となっている。でも、配信の世界では、それがまだ絶対にダメではない。つまり、地上波では自主規制がルールになっていて、自分たちで諦めているだけなのかもしれない。だから、配信の世界では、自主規制のハードルを少し下げて作ってみようと意識しています。もちろんフジテレビの考査も気にしつつですが。

『不倫食堂』(c)フジテレビ

ーー田中圭さんが演じる主人公が、出張先の飲食店で不貞をはたらく『不倫食堂」は、性的表現においても、「不倫はいかん!」という風潮のご時世においても、プチチャレンジをしている作品ですね。

清水:基本的には大人の男性向けの、FODにおいては異色の作品です。でも、なかなか見られない役どころのため、田中圭さんの女性ファンが相当数見ているのです。

FODは“胸キュンもの”が溢れるプラットフォーム

ーー脚本家、演出家といったクリエイターは、配信ドラマに対してどのようなモチベーションで取り組んでいると感じますか?

清水:昨年度で14本という数になっているので、「FODに持っていけばオリジナルドラマが作れるかもしれない」「地上波よりも面白いものができるかもしれない」という見られ方になってきているのか、配信に対するとっつきにくさが減っているのか、制作会社や、これまでに仕事をした演出家や脚本家からの企画をいただくことが増えました。僕自身、地上波よりも、やりたいと思った企画がスピード感をもって実現できる状況にあります。制作会社だけでなく、弊社の地上波の制作部からも、地上波で莫大な費用をかけてつくるような企画ではないけれど、なるべく旬なタイミングで映像化したいという企画が来ています。

清水一幸氏

ーーどんな企画がほしいとお考えですか?

清水:少女漫画原作の、胸キュンものです。FODはそういうコンテンツがラインナップされているプラットフォームであることを押していきたいし、売っていきたい。オリジナル作品だとしても、その方向性が見えるものであれば、作っていきたいです。

ーー地上波の視聴率に対し、FODにおいてヒット作の指針はというと?

清水:それが難しいところなんです。地上波と違って視聴率は出ませんし、視聴数が出ても数年前に配信された作品と、その週に配信された作品では比較できない。収益も、プレミアム会員は月額888円(税抜)を支払えばなんでも見られる一方、1話ごとに都度課金するシステムもある。「最近、この作品がハネてるよね」という印象論では語れますが、総合的に一番ハネた作品は◯◯である、という結論付けはできません。

ーーでは、いつかみなさんで「目標達成!」「やったね!」と乾杯することがあるとしたら何が起きたときだと思いますか?

清水:現実的には、会員数が100万人になったときじゃないでしょうか。そこは近々の目標として、実現させたいと思っています。

(取材・文=須永貴子/撮影=大和田茉椰)

■配信情報


『パフェちっく!』
FODにて、毎週土曜日最新話配信中
出演:高橋ひかる、中尾暢樹ほか
原作:ななじ眺『パフェちっく!』(集英社マーガレットコミックス刊)
プロデュース:東康之(フジテレビ)
プロデューサー:黒沢淳(テレパック)
演出:山内宗信、石井満梨奈、佐野隆英、安見悟朗
脚本:三浦駿斗、木滝りま、諸橋隼人、木梨亜美
制作協力:テレパック
制作著作:フジテレビ
(c)ななじ眺/集英社・フジテレビ
公式サイト:http://www.fujitv.co.jp/p-tic/
FOD『パフェちっく!』配信ページ:http://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4f05/

■動画配信サービス情報
『FOD』
<利用料金>
FODプレミアム:月額888円(税抜)
月額定額の見放題コース:月額350円~1,500円(税抜)
月額ポイントコース:月額300円~2,000円(税抜)
※ポイントが足りない場合はチャージ可能

対象端末:PC(WIN・MAC)スマートフォン、タブレット(iOS対応端末・AndroidTM対応端末)
公式サイト:http://fod.fujitv.co.jp/
※本文中に記載の会社名、製品名、サービス名等は、それぞれ各社の商標または登録商標。

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