アニメ的誇張なしで描く繊細な心理描写が魅力 『リズと青い鳥』から感じる実写的リアリティー

『リズと青い鳥』の実写的リアリティー

 劇中、吹奏楽部顧問である滝昇が「音楽には、楽譜に書ききれない間合いがあります」と語る場面がある。この滝のセリフは、本作全体のテーマも示唆しているのだろう。“楽譜に書ききれない間合い”と“言外の感情表現”は、どこか似ている。「楽譜に書ききれない間合いとは何か」という問いを言葉で説明するのはとても難しい。しかし恐らく、感情を言葉以外の方法で表現するみぞれを見ていれば、「きっと、音楽の間合いもこんな具合のものなのだろう」と肌で感じられるはずだ。そうした意味で、本作における“間”の描き方は、大変音楽的であるともいえる。

 実写映画的で、なおかつ音楽的な側面も持ち合わせている本作に触れ、「アニメはここまで多様化しているのか」と非常に驚かされた。“進化”と言うよりも、“多様化”と言った方がしっくりくるように思える。もちろん、本作は『ユーフォ』シリーズの知識がなくとも存分に楽しめる内容なので、普段アニメ作品にあまりふれないような人にも、アニメ映画の多様性をぜひ体感してほしい。

■まにょ
ライター(元ミュージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。Twitter

■公開情報
『リズと青い鳥』
全国ロードショー中
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:髙橋博行
撮影監督:髙尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
配給:松竹
(c)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
公式サイト:http://liz-bluebird.com/
公式Twitter:@liz_bluebird

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