王道の『わろてんか』と攻めの『半分、青い。』 視聴者ひきつける朝ドラの攻防

視聴者をひきつける朝ドラの攻防

 北川氏といえば『愛していると言ってくれ』『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』(全てTBS系)と、TVドラマ史に残る傑作ラブストーリーを数多く手がけてきた名脚本家。本作には、ヒロインの出身地といい、登場人物が患う持病といい、北川氏本人の経験や境遇が色濃く反映されてもいる。それだけリアルで丁寧にドラマを描いていこうとする姿勢の表れだろう。また、彼女にとっては実績のあるラブストーリーでなく、人間ドラマを描くというのも大きな変化で、それに関しては「私は恋愛よりも家族を書くことに恥ずかしさを感じるタイプで、ホームドラマをずっと避けてきたんですが、序盤のお話を書いていく中で、恋愛も家族も変わらないなと思いました。私は人と人とのつながりを書くのが好きなんだと、改めて感じているところです」と語っている(『半分、青い。』公式サイト|インタビュー 脚本・北川悦吏子より)。つまり本作は北川氏の“冒険”そのもの。それだけに集大成となるのではとの期待もかかる。

 『わろてんか』ではスタンダードを、『半分、青い。』ではセオリーから外れたものを。このバランスは前年の『べっぴんさん』の王道ぶりと、その後の『ひよっこ』の異端さにも不思議と通じる。まるで前後の作品が互いに補完しあうことで、ルーティーンで視聴している層にも飽きさせないテンポを生みだしているかのようだ。

 さあ、攻守交代。これから半年間は攻めの朝ドラで大いに楽しませて欲しい。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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