『99.9』最終話、真犯人を明かさなかった理由とは? 現実にも通ずる“司法の深い闇”を考える

『99.9』真犯人を明かさなかった理由

 ふとここで、シーズン1の最終話で深山が語った最終弁論の言葉を引用したい。「無罪が確定しても、生活は元通りになるわけではありません。何もなかった平穏な日々、幸せを、過ぎ去った時間を、取り戻すことはできません」。

 クライマックスシーン、再審により無罪判決が下った男性は息子と抱き合いながら、彼にこれからは好きなことをするように告げる。息子の目標であった父を救い出すことは達成されたが、事件当時少年だった彼が過ごしてきた8年間という時間は決して取り返すことはできない。8年以上の時間をかけたところで、絶対に戻らないのだ。

 現実の世界では、これまでも多くの事件の再審が開始され、無罪判決が下ってきた事例がある。その誰もが、奪われた時間を取り返すことはできていない。現在も1966年に起きた袴田事件と1979年に起きた大崎事件の再審開始を認める判決が出ながら抗告がなされ、未だ再審が開始されていない。他にも1988年に起きた鶴見事件など、多くの事件が再審請求を繰り返す中、昨年夏には1991年に発生した殺人事件について再審請求中だった死刑囚の刑が執行された。

 「司法への信頼は揺るがしたらいかん」と語る川上に問いかける深山の言葉が本作の、シーズン1と2を通しての最大のテーマだ。「司法とは一体誰のためにあると思っているんですか?」。今回のエピソードのように再審請求がスムーズに通ることは、非現実的かもしれない。それでも、より多くの事件が“事実”にたどり着くことができて初めて“司法への信頼”は生まれるものなのだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士- SEASON II』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54
出演:松本潤、香川照之、木村文乃、青木崇高、片桐仁、マギー、馬場園梓、馬場徹、映美くらら、池田貴史、岸井ゆきの、渡辺真起子、藤本隆宏、首藤康之、奥田瑛二、笑福亭鶴瓶、岸部一徳
脚本:宇田学
トリック監修:蒔田光治
プロデュース:瀬戸口克陽、東仲恵吾
演出:木村ひさし、岡本伸吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/999tbs

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