妻夫木聡も惚れ込んだ「アンチ共感」的演出 石川慶監督『連続ドラマW イノセント・デイズ』に期待!

石川慶監督『イノセント・デイズ』に期待!

 日本の映画やドラマの多くは「主人公への共感」をベースに物語が進んでいく。もちろん、作劇上においても、エンターテインメントとしても、それは必ずしも間違ったことではないが、石川監督の抑制が効いた演出は、主人公(及びほかの登場人物)への共感が安易に発生しないよう周到に心がけているように見受けられる。興味深いのは、これまで数々の作品における「泣きの演技」の巧さについてしばしば語られていた妻夫木聡が、『愚行録』に続いて、過去の代表作とは真逆とも言える石川監督の「アンチ共感」的演出に惚れ込み、本作の実現に向けても大いに貢献したという事実だ。また、中村義洋作品『残穢 -住んではいけない部屋-』や黒沢清作品『クリーピー 偽りの隣人』に続いて、すっかり「アンチ共感」的キャラクターを乗りこなすようになった竹内結子の静かな怪演にも注目してほしい。

 各方面から賞賛された『愚行録』を経て、妻夫木聡、竹内結子、新井浩文、芳根京子をはじめとする映画でもメインロールを張れるような人気と実力がともなった役者たちがキャスティングされた石川監督の新作が、どうして映画ではなく連続ドラマとなったのか、不思議に思う人もいるかもしれない。しかし、今や海外においては「アカデミー賞を受賞した監督でも、その次作はドラマ」というのが当たり前の時代。監督も役者も、作品ごとにそのフォーマット(映画かドラマか)やリリース方法(ネット局かケーブル局か配信サービスか)を慎重に選ぶようになってきている。WOWOWの「ドラマW」という場、そして全6話、約6時間という長尺で、「日本映画らしくない日本映画」の新たな可能性を切りひらいた石川監督がどんな語り口や技法を駆使して物語を語っていくのか。固唾を飲んで見守りたい。

連続ドラマW イノセント・デイズ /インタビュー付プロモーション映像(180秒)【WOWOW】

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

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■放送情報
『連続ドラマW イノセント・デイズ』
3月18日(日) WOWOWプライムにて放送スタート
毎週日曜22:00~(全6話)第1話無料放送
出演:妻夫木聡、竹内結子、新井浩文、芳根京子 / ともさかりえ、長谷川京子 / 池内博之、山中崇、芦名星、佐津川愛美、清原果耶、田口浩正、原日出子、石橋蓮司、余貴美子 ほか
原作:早見和真『イノセント・デイズ』(新潮文庫刊)
企画:妻夫木聡、井上衛、鈴木俊明
監督:石川慶
脚本:後藤法子
音楽:窪田ミナ
プロデューサー:井上衛、橘佑香里、平部隆明
企画協力:新潮社
製作:WOWOW ホリプロ
公式サイト:http://www.wowow.co.jp/dramaw/innocentdays/

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