初登場1位『今夜、ロマンス劇場で』にみる、各配給会社の「カラー」の消失

各配給会社の「カラー」の消失

 かつて、日本映画には東宝には東宝の、松竹には松竹の、東映には東映の、大映には大映の、日活には日活の、新東宝には新東宝の、それぞれの作品のカラーというものがあった。その背景にはスタジオ・システムのほか、監督や俳優を契約で縛る五社協定という古い習慣もあったわけだが、それらが機能しなくなった1970年代以降も、東宝作品、松竹作品、東映作品にはそれぞれの作風が残っていて、それらは良くも悪くも一部の作品においては健在だ。

 ワーナーのローカル・プロダクション作品にも、日本テレビとの強い結びつきや、藤原竜也の主演作品が多いことなど、ある程度「カラー」のようなものが形成されてきていたが、昨年から今年にかけての作品群を見るとそれが希薄になってきている。広瀬すず主演、三木孝浩監督の『先生! 、、、好きになってもいいですか?』が東宝配給作品ではなくワーナー配給作品だと知って驚いたのは自分だけではないだろう。一方で、ワーナーらしい優れたマーケティングによってヒット作となった『ヒロイン失格』の二番煎じのような『リベンジgirl』が、ワーナーと同じく海外に本社のあるソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのローカル・プロダクション作品として公開されて、作品的にも興行的にも大失敗するという事態も起こったばかりだ。

 海外では昨年末に老舗の20世紀フォックスがディズニーに買収されるなど、業界再編の動きが激しくなっている現在。日本の配給会社も今後大きな荒波に飲み込まれるのは間違いなく、そんな時に作品の独自性などと悠長なことを言っている余裕はないのかもしれない。それでも、どこかでメジャー作品には映画会社の「カラー」のようなものを求めてしまうのは、古い映画ファンの独りよがりな思いなのだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『今夜、ロマンス劇場で』
全国公開中
監督:武内英樹
脚本:宇山佳佑
音楽:住友紀人
主題歌:シェネル「奇跡」(ユニバーサル ミュージック)
キャスト:綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、西岡德馬、柄本明、加藤剛
制作プロダクション:フィルムメイカーズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会
公式サイト:romance-gekijo.jp

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