『孤独のグルメ』はなぜ中毒性があるのか? 松重豊演じる井之頭五郎像の絶妙な変化

『孤独のグルメ』はなぜ中毒性があるのか?

 そして、その全ての「美味しさ」を全身でかみ締めるように、あらゆる料理を見事に平らげていく、松重豊演じる井之頭五郎が最大の魅力だ。最初の頃の彼は、女性受けより男性受けを狙っていたのだろう、もっとあらゆることにこだわりが強い男性像だった。酒は飲めず甘いものも好きだが、食だけでなく煙草の一服も至福の1つで、仕事先で出会う女性に翻弄されたり、時折彼こだわりの行きつけの店を訪ねたりもしていた。だが、回を重ねるごとに、ある意味丸くなったのか、よりストイックになったのかわからないが、彼は常に仕事に邁進した後の食の幸福だけを求め、時折寄り道してまた何かを食べたりする、男女年齢問わず万人に愛される「とにかく食べる」男性像になったのである。そして、彼の町巡りと幸せな食べっぷりは、見ている視聴者が男性であろうと女性であろうと必ず経験したことのある、本当に美味しいものを美味しい場所で食べている時の幸せな自分の姿を投影する存在としても機能している。

 今回は瀬戸内地方への出張ということで、井之頭五郎はたった2日で3県を食べ尽くす。一体どんな美味しい出会いがあるのだろう。柄本明にキムラ緑子さらには瀬川瑛子!と絶妙すぎるゲスト陣も嬉しい。さらに、五郎さんが何かを食べるラストシーンは、生放送らしい!「なんだろう、やっぱり・・・いやいや意外と違ったりして?」と期待を膨らませながら、年越しそばを準備して待っておこうと思う。

 ■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『孤独のグルメ 大晦日スペシャル 〜食べ納め!瀬戸内出張編〜』
12月31日(日)22時〜23時30分放送
出演:松重豊、キムラ緑子、山村紅葉、竹原慎二、ダンカン、柄本明
原作:「孤独のグルメ」 作・久住昌之 画・谷口ジロー(週刊SPA!)
脚本:田口佳宏
音楽:久住昌之、ザ・スクリーントーンズ
演出:溝口憲司、井川尊史
(c)テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume_setouchi_sp/

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