年末企画:小田慶子の「2017年 年間ベストドラマTOP10」 “傑作”はないが、“秀作”は数多い1年

小田慶子の「2017年ベスト 年間ベストドラマTOP10」

 『陸王』はもはや力技。若いイケメン(竹内涼真)が自分の作ったシューズを履いてくれるだけでブワッと涙する乙女のようなオヤジ社長(役所広司)という構図は、冷静に考えるとどうかしているのだが、そう突っ込む隙も与えず、圧倒的な演技と演出とロケ映像で引っ張っていった。残業代が払えないなどブラックにならざるをえない中小企業の現状、アスリートに対するスポンサーの横暴など、問題提起もあった。

 『刑事ゆがみ』は、浅野忠信と神木隆之介という天才同士の共演にしびれた。数字を取るためのキャスティングよりもクリエイティビティが優先される心地よさ。海外ドラマライクな作風も好みで、終盤、弓神(浅野忠信)の過去の罪が露見するという展開にも、ちゃんとした伏線があったからこそアガった。

 『連続ドラマW 東野圭吾「片想い」』は、トランスジェンダーの主人公・美月を中谷美紀が熱演。美月が好きな女性を見つめる視線がちゃんと“男”だわ~というような萌えも提供しつつ、これまでドラマでは男女の恋のアクセントにすぎなかった同性愛者を主役にした挑戦は、特筆すべき。

 『ひよっこ』で最も好きだった点は、有村架純演じるヒロインのみね子を始め、女性が自分を客観視できる存在として描かれていたこと。工場でも洋食屋でも自分の仕事の習熟度が低いことを認め、地道に努力するみね子。その母や女優の世津子も、みんな完璧ではない自分を抱え、傷つくことを恐れながら懸命に生きている。10月から始まった『わろてんか』(NHK)のヒロインもしっかり者で、うれしいことに、自意識過剰でイラッとくる朝ドラヒロインの時代は終わったのかもしれない。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■リリース情報
『カルテット』
【Blu-ray】発売中
価格:24,000円+税
仕様:4枚組(本編DISC3枚+特典DISC1枚)
※仕様は変更となる場合がございます。

【DVD】発売中
価格:19,000円+税
DVD仕様:6枚組(本編DISC5枚+特典DISC1枚)
※仕様は変更となる場合がございます。

<特典映像>
【特典映像】
・「おとなの掟」MVスペシャルVer.
・「カルテット」座談会完全版
・プレミアム制作発表
・ハプニングNG集
・名場面&オールアップ集
・すずめちゃん撮影:スティックドミノ倒し映像
・ナビ番組
・吉岡里帆 芸能人も流行の動画をやってみたシリーズ
・吉岡里帆 スペシャルトーク
・藤原季節 先輩たちと仲良くなりたい!“Mummy-D”
・藤原季節 お弁当レポート
・宣伝SPOT集
【音声特典】
本編オーディオコメンタリー(第1話)
松たか子&高橋一生&松田龍平&土井裕泰(演出/チーフプロデュース)

出演:松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし(サンドウィッチマン)、八木亜希子、Mummy-D、宮藤官九郎、もたいまさこ
脚本:坂元裕二
主題歌:「おとなの掟」Doughnuts Hole
音楽:fox capture plan
演出/チーフプロデュース:土井裕泰  
プロデュース:佐野亜裕美
演出:金子文紀 坪井敏雄
製作著作:TBS
発売元:TBS
発売協力:TBSサービス
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBS

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