実話に鮮明さを与える土屋太鳳の“笑顔”の効能ーー『8年越しの花嫁 奇跡の実話』の演技に寄せて

『8年越しの花嫁』土屋太鳳の“笑顔”を考察

 やがて、身を捧げる尚志の愛のあたたかさに触れた麻衣は、失くしてしまった〈あの時〉にすがろうとするのではなく、いま〈この時〉から一歩を踏み出すことを決意する。彼女の踏み出した一歩によって展開されるフラッシュバックのなかで、あの出会いの場面に見せた“笑顔”がいまいちど輝く。

 尚志の献身的な愛は、“笑わない土屋太鳳”の笑顔を取り戻した、あるいは笑顔を引き出したとも言える。ついに2人が結ばれる映画の終わりで、ウエディングドレス姿の土屋は最大の“笑顔”を見せる。静かに微笑みかける佐藤に対して、画面の隅から隅までが活気づくような土屋の“笑顔”は、この“奇跡の実話”の映画化の締めくくりに相応しい、生の輝きに満ちている。彼女の笑顔の力強さによって、この愛の物語はさらなる輝きを得たのだ。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『8年越しの花嫁 奇跡の実話』
全国公開中
出演:佐藤健、土屋太鳳、北村一輝、浜野謙太、中村ゆり、堀部圭亮、古舘寛治、杉本哲太、薬師丸ひろ子
主題歌:back number「瞬き」(ユニバーサル シグマ)
監督:瀬々敬久
脚本:岡田惠和
音楽:村松崇継
原作:中原尚志・麻衣「8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら」(主婦の友社)
制作プロダクション:松竹撮影所、東京スタジオ
配給:松竹
(c)2017映画「8年越しの花嫁」製作委員会
公式サイト:8nengoshi.jp

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