なぜミュージカル映画に挑んだのか? 『52Hzのラヴソング』ウェイ・ダーション監督インタビュー

『52Hzのラヴソング』監督インタビュー

「観客がハッピーに、スタッフが心から楽しめる作品に」

ーーミュージカルというジャンルもそうですが、現代を描いているのもこれまでの監督の作品とは異なっていますね。同性愛のカップルが登場したりと、現代社会の流れを反映した部分も見受けられました。

ウェイ・ダーション:脚本が完成した当時(2014年)は、台湾では同性愛についてまだそこまで議論がされていなかったのですが、ちょうど今年、アジアで初めて同性婚の合法性が認められました。私が今回の作品で描きたかったのはバレンタインデーの1日の出来事で、孤独な人々が最終的に幸せになる様子でした。結果的に社会的なメッセージが反映された内容になりましたが、それよりも孤独な男女たちの対比として、幸せな女性2人のカップルを登場させたのです。マイノリティである彼女たちもある種“孤独”なわけで、とにかくいろいろな要素を詰め込みたいと考え、できる限りそれを反映させました。

ーーこれまでの作品では数々の映画賞を受賞していながら、今回の作品では、映画祭へのコンペティションにエントリーしない方針を発表していましたね。

ウェイ・ダーション:今回の作品は、観客みんながハッピーになれる、我々スタッフたちが心から楽しめるような作品にしたかったんです。なので、最初から映画祭のコンペ部門に出品するつもりがないこと、出品しないからといって失望しないでほしいということは、スタッフ一同に伝えていました。彼らの意見を聞いたところ、映画祭へのこだわりはまったくないと、みんな私の意見に賛成してくれたんです。その約束もあって、今回の作品は映画祭のコンペ部門には出品しませんでした。これは常に私が感じていることなのですが、映画祭は作品が上映される場としてはいいと思います。ただ、コンペに出品してしまうと、そこで他の作品と比べて評価されてしまう。それが、まるで市場で肉の量り売りをされている気分になるので、私は映画祭のコンペ部門には好意的ではありません。もちろんすべてを否定するわけではありませんが、自分の子供のようにかわいい、苦労して作った作品を守る意味でも、今回の選択は正解だと思っています。

ーー今後、また今回のような作品を作ることはあるのでしょうか?

ダーション:私がいま手がけているのは、歴史ドラマの大作で非常に難しい作品です。3本の作品を同時に撮っているので、完成したら一気に3本公開される予定です。その作品を撮る前に、リラックスした気持ちで臨める、ハッピーで軽やかな作品を作りたいということで、今回の『52Hzのラヴソング』を撮りました。今後、重たくて規模の大きな作品がまた続けば、今回のような作品を作ることはあるかもしれませんね。

(取材・文=宮川翔)

映画『52Hzのラヴソング』日本版予告映像

■公開情報
『52Hzのラヴソング』
12月16日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本:ウェイ・ダーション(魏德聖)
脚本:ヨウ・ウェンシン(游文興)、スー・ダー(蘇達)
音楽:リー・ジェンファン(李正帆)、ジェニファー・ジョン・リー(李王若涵)
撮影:チン・ディンチャン(秦鼎昌)
出演:リン・ジョンユー(林忠諭 ※宇宙人の小玉)、ジョン・ジェンイン(荘鵑瑛 ※ex.棉花糖の小球)、スミン、チェン・ミッフィー(米非 ※小男孩樂團の米非)、リン・チンタイ(林慶台)、シンディ・チャオ(趙詠華)
特別出演:リー・チエンナ(李千娜)、チャン・ロンロン(張榕容)、ファン・イーチェン(范逸臣)ほか
提供:ポリゴンマジック
配給:太秦
(c)2017 52Hz Production ALLRIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://www.52hz.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる