初登場1位は『鋼の錬金術師』 2017年のアクション系コミック実写化を総括する

初登場1位は『鋼の錬金術師』


 先週末の映画動員ランキングは『鋼の錬金術師』が、土日2日間で動員19万1200人、興収2億6400万円をあげて初登場1位に。映画サービスデーと重なった初日12月1日からの3日間累計では動員29万1000人、興収3億7300万円。まずはヒット・スタートといったところだが、累計7000万部以上を誇る超人気コミック原作の映画化にして、入場者特典で原作者・荒川弘の描き下ろした新作エピソードを収録した特別コミック『ハガレン0(ゼロ)』が配布されるという万全の体制が敷かれたことをふまえると、スタート・ダッシュと言うには少々物足りない滑り出しとなった。

 2017年の実写日本映画を振り返って、企画段階での一つの大きな流行となったのは、同時多発的に公開されたアクション系人気コミック作品の実写化作品だった。昨年までのコミックの実写化ブームは少女コミック、女性向けコミックの原作ものが牽引してきたが、その実写化ブームが過去にテレビ・アニメ化で成功を収めてきたアクション系コミックにまで飛び火したかたちだ。その背景としては、数年前までハリウッド映画とは絶望的な差があったVFX表現が、技術の進化、及びそれにともなうコストの低下によって、少なくとも画的には見劣りしない作品の製作が可能となったこと。そして、原作の長短にかかわらずシリーズ化できるのは一部の作品に限られる恋愛もののコミックと比べて、シリーズ化を見据えた製作に必然性を持たせやすいことなどが挙げられる。

 アクション系人気コミックのテレビ・アニメ化を経ての実写化において、現在のブームに先鞭をつけたのは2012年から2014年にかけて3作品が公開された『るろうに剣心』シリーズだろう。また、VFX面の進化を反映した作品として真っ先に思い浮かぶのは2015年に2作品が公開された『進撃の巨人』だ。興行サイドからも観客からも大きな期待の中で公開された実写版『進撃の巨人』は、前編の最終興収が約32.5億円、後編の最終興収が約16.8億円と一定の成果を残したが、約半減してしまった後編の興収が示しているように、続編まで観客の関心を引きつけることには失敗した。

 7月公開の『銀魂』、『東京喰種 トーキョーグール』、8月公開の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』、9月公開の『亜人』と夏から秋にかけて立て続けに公開されたアクション系コミック実写化作品(『帝一の國』や『斉木楠雄のΨ難』の原作はアクション系コミックと括るには無理があるのでここでは除外する)。それぞれの作品の原作時点での知名度、公開規模などにも差はあるものの、その中で、唯一期待通りの成果を残したのは、最終興収約38億を記録し、先日続編の製作も発表された『銀魂』だろう。他の作品は、公開当時「失敗作」の烙印を押されてしまった『進撃の巨人』の2作目、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』の16.8億円にも及んでいない。

 『銀魂』の公開初週、週末2日間の興収は5億4103万2900円。オープニング4日間の興収は9億8229万1500円。いずれも、先週末公開の『鋼の錬金術師』の2倍以上のペースだ。今回の『鋼の錬金術師』の土日2日間の興収2億6400万という数字は、9月公開の『亜人』とほぼ同じペース。『亜人』の興収は現在のところ累計約14億円。したがって、現実的には興収15億円あたりが目標となってくるが、その数字が、今回念頭に置かれていたという続編製作へのGOサインの基準を満たすことになるのかどうかはわからない。

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