瑛太の絶叫、井浦新の狂気ーー登場人物それぞれの罪とは? 大森立嗣監督作『光』が抉り出す“闇”

『光』が抉り出す救いのない“闇”

 映画の中の2人の観客は、罪とは無縁であるはずだった。だが、罪はそこここに亡霊のように現れる。目撃者に過ぎなかった輔は父親への殺意と信之への愛憎で、罪と暴力の連鎖に巻き込まれていく。「椿」という名前を負わされた幼い娘に災いが降りかかる時、南海子もまた、簡単には拭い去ることができない罪を負う。

 果たして、スクリーンの向こうをじっと息を呑んで見つめるしかない私たち観客はただの目撃者のままでいられるだろうか。底なし沼のような暗闇の中を、何かが蠢き這うようにおぞましく発光する青色の「光」は、こちら側の世界まで触手を伸ばしてくるような気がした。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■公開情報
『光』
新宿武蔵野館、有楽町スバル座ほか全国順次公開中
出演:井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ、南果歩、平田満
監督・脚本:大森立嗣
原作:三浦しをん(「光」集英社文庫刊)
音楽:ジェフ・ミルズ
配給:ファントム・フィルム
(c)三浦しをん/集英社・(c)2017『光』製作委員会
公式サイト:hi-ka-ri.com

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