日本映画界にはもっとヒットシリーズが必要? 『HiGH&LOW』の功績を振り返る

『HiGH&LOW』の功績を振り返る


 先週末の動員ランキング1位は『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』。土日2日間で動員23万7000人、興収3億400万円。先行上映分を含めると累計で動員28万3000人、興収4億2800万円。シリーズ過去2作、スピンオフ作品を含めると3作、いずれも初動の勢いはあった一方で、興行の持続力には欠けているというファン・ムービー特有の推移をしてきた同シリーズではあるが、シリーズ最終作の本作においても初動での安定した強さを発揮している。

 前作『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』のオープニング2日間の成績は動員26万6064人、興収3億5146万円。先行上映分を含めると4億1231万円。現時点での累計興収は約14億。ちなみにこの数字は、『銀魂』、『君の膵臓をたべたい』、『忍びの国』、『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』、『海賊とよばれた男』、『関ヶ原』、『昼顔』、『相棒-劇場版IV-』、『帝一の國』、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』といった作品に続いて、今年の実写日本映画のトップ10入りをぎりぎり逃したところに位置している。『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』の現実的な目標は、前作を超えて、今年の実写日本映画興収トップ10の一角をうかがうといったところだろう。

 年間興収ランキングの対象となるのは、その年の11月に公開された作品まで。つまり、正月興行をみすえた12月公開の大作群を待たずに、実は2017年の対象となる強力な作品はもうすべて出尽くしたことになる。全体的に実写日本映画の低調ぶりが特に目立った2017年。前述した上位作品を見わたしてみても明らかなように、その原因は有力なフランチャイズ作品が育っていないことだ(逆に言えば、今年の国内アニメーション映画の興収上位作品はすべてシリーズものだった)。現時点での実写日本映画トップ10のうち、フランチャイズ作品は約10年前に初めて映画化された『相棒-劇場版-』シリーズのみ。ハリウッドのようにフランチャイズ作品だらけになってしまうことがいいことかどうかはさておき、少なくとも日本映画の興行面における最大の課題はそこにある。

 ここまで1年4か月という短い間にハイペースで4作品が製作されてきた『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズは、そんな日本映画界全体の課題に真っ正面から取り組んで、そこで結果を出してきた。今回の『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』でフィナーレを迎えることとなった同シリーズだが、近い将来、また同じような座組で新たなフランチャイズが再起動されることは、シリーズのファンだけでなく、映画興行界全体の望みでもあると言っていいだろう。

 今年の実写日本映画でナンバーワンの興収(暫定だが、事実上もう決定している)を記録した『銀魂』(累計興収約38億)は、ちょうど昨日(11月16日)、その続編が来年夏に公開されることが発表された。興収ランキングの対象としては来年の作品となる今年12月以降の公開作には、『探偵はBARにいる3』(12月1日公開)、『ちはやふる -結び-』(2018年3月17日公開予定)といった、実写日本映画界においては数少ない有力フランチャイズ作品の公開も控えている。一方、今年公開された『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』のように続編を想定して製作されながら、1作目が不調だったために続報が聞こえてこない作品もある。

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