黒沢清監督×夏帆『予兆 散歩する侵略者 劇場版』対談 「最終的には女性が引っ張っていく」

『予兆』黒沢清×夏帆対談

「僕と高橋洋(脚本)の間で共通していたのは“女性のほうが強い”ということ」

ーー夏帆さんが演じた主人公・悦子は、映画『散歩する侵略者』で長澤まさみさんが演じていた主人公・鳴海と対になっている印象も受けたのですが。

黒沢:それはあまり意識しませんでした。2人とも夫のいる妻だということ、そして夫が普通ではなくなっているという現状をどう打破していくかという意味では、確かに同じポジションではあります。ただ、『予兆』に関していえば、脚本の高橋洋のテイストが、『散歩する侵略者』とはだいぶ違うものとして夫婦のあり方に反映されていると思います。ただ、監督はどちらも僕ですし、高橋くんはよく知っている友達でもあるので、なんとなく共通した感覚もあって。それは何と言っても女性のほうが強いということ。悦子は世界の全責任をひとりで背負ってしまうわけで、女性にそんな責任を背負わせるのは恐縮ではあるのですが(笑)。それは男の目線かもしれませんが、フィクションの世界ではそれが面白いし、日常感覚でもそうだよなということは、僕と高橋洋の間で共通していました。最終的には女性が引っ張っていく、女性が決断を下すという展開になるのは『散歩する侵略者』も『予兆』も同じですね。

夏帆:私も映画版を意識することは特にありませんでした。『予兆』は映画から生まれたスピンオフで、映画と同じ設定ではありますが、まったく別のものと捉えていました。ただ、『予兆』の脚本を読んでから『散歩する侵略者』を観たので、より一層この世界観を理解することができたと思います。

ーー『散歩する侵略者』はもちろん、黒沢監督の作品全般においてもそうなのですが、『予兆』はエキストラの方々の動きが非常に印象的でした。

黒沢:エキストラの動きは重要ですね。主人公を撮っていても主人公だけが映っているのではなく、周りに余白がたくさんあるわけです。そこに何を配置するかで印象が全然変わってくるので、主演俳優がある動きをしているなかで、エキストラはもちろん、風の動きや光の変化など、様々な表現を試みています。

夏帆:病院のシーンや縫製工場のシーンとかすごかったですよね。私は病院のシーンでは出番がなかったのですが、撮影の様子を見に行ったんです。東出さん演じる真壁が歩くのとあわせてバタバタと人が倒れていくのは見ていて本当に面白かったですね。しかも皆さん倒れていくのがすごく上手くて(笑)。

黒沢:メインの登場人物以外の人間をどう変化させていくかは、僕としてもやりがいがありますし、演出において一種の腕の見せどころでもあります。

ーー夏帆さんはホラーやサスペンス作品と非常に相性がいい気がするのですが、今回の悦子のような役を演じる際、特に意識していることはあるのでしょうか。

夏帆:そうですか?(笑)その都度、いろいろと考えてはいるのですが、特別何かを意識していることがあるかと言われると……。

黒沢:今回の撮影に入る前は園子温さんの『東京ヴァンパイアホテル』をやっていましたよね?

夏帆:そうですね。『予兆』に入るちょっと前にやっていました。

黒沢:僕はまだ拝見していないのですが、それもあってかは今回はラクでした。経験のない女優さんですと、悦子のような役柄をどうやって演じるか戸惑われたと思うのですが、拳銃を持って倉庫の中をゆっくりと進んでいく姿なんか、もう板についていて。

夏帆:そうですか? なんか似合わないなと思ってしまいましたけど(笑)。

黒沢:いやいやいや。拳銃を持って走る姿なんて、毎日持ち歩いているんじゃないかというぐらいで。

夏帆:『東京ヴァンパイアホテル』の撮影で毎日持っていたのは確かです(笑)。

黒沢:そうですよね(笑)。ちょっと予想外だったのが、あまりに素早くババババッと撃つので、「一応素人という設定なんですけど…。これだとプロではないですか」と。

夏帆:そうなんですよ。ついつい癖で撃っちゃって(笑)。

黒沢:拳銃を撃つ手つきはプロのようでした。

夏帆:黒沢さんにおっしゃっていただいたように、確かに自分では意識していないところで、これまでの経験が積み重なっているところが大きい気がします。いろいろ失敗もして、自分なりにいろいろと考えた結果が、今回の作品にも反映されていると思います。

(取材・文=宮川翔)

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※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※複数のお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。

<応募締切>
11月21日(火)

■公開情報
『予兆 散歩する侵略者 劇場版』
新宿ピカデリー、名古屋ミッドランドスクエアシネマ、なんばパークスシネマ、札幌シネマフロンティアにて公開中
出演:夏帆、染谷将太、東出昌大、中村映里子、岸井ゆきの、安井順平、石橋けい、吉岡睦雄、大塚ヒロタ、千葉哲也、諏訪太朗、渡辺真起子、中村まこと、大杉漣
原作:前川知大『散歩する侵略者』
監督:黒沢清
脚本:黒沢清、高橋洋
音楽:林祐介
配給:ポニーキャニオン
(c)2017「散歩する侵略者」スピンオフ プロジェクト パートナーズ
公式サイト:http://yocho-movie.jp

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