カンヌ国際映画祭総代表が語る、リュミエール兄弟の功績とカンヌにおける日本映画の重要性

『リュミエール!』監督インタビュー

「カンヌ国際映画祭にとって、日本映画は非常に重要」

ーーあなたにはカンヌ国際映画祭の総代表というもうひとつの大きな肩書きがあります。70回目の開催を迎えた今年のカンヌ国際映画祭では、新鋭監督の主要部門独占や女性監督の台頭など、大きな変化が見られたと同時に、現代社会で起こっていることに対しての、映画人たちの政治的なメッセージが印象に残りました。

フレモー:まず、カンヌ国際映画祭は世界でもっとも重要な映画祭のひとつなので、世界で起こっていることを反映した映画祭でもあります。だからこそ、カンヌ国際映画祭で映画人たちが様々な議論をするのは当然のことだと思います。もしも映画人たちが恋愛の話しか語らないようであれば、カンヌもそのような映画祭になるでしょう。映画人たちがいまの世界の現状を語っているわけですから、カンヌもいまの世界の現状を語る場となるわけです。

ーー今回あなた自身も参加された東京国際映画祭は、日本の外から見るとまだまだ知名度が低い、そこまで注目を浴びていないような印象があるのですが、あなたは東京国際映画祭をどう見ているのでしょうか。

フレモー:東京国際映画祭は世界の中でも重要な映画祭のひとつとして考えられています。まず大都市の東京で開催されているということが大きいですし、日本は映画大国として知られています。だからこそ今回私は日本に来たのです。日本に来ることは私にとっても大きな意味を持つことででした。

ーー今回の作品の中でも日本映画への言及がありましたが、現代の日本映画についてはどのような印象を抱いていますか?

フレモー:カンヌ国際映画祭にとって、日本映画は非常に重要です。なぜならカンヌ国際映画祭に必要なものだからです。近年のカンヌの常連でもある、河瀬直美、是枝裕和、黒沢清たちの前には、今村昌平、黒澤明、吉田喜重がいました。そして鈴木清順がいたように、いまは三池崇史がいます。そしてもっとも重要な北野武もいます。おそらく若い才能もたくさんいるでしょう。日本にとっても重要な商業映画があると思いますが、そういった商業映画を撮っている監督のなかにも、カンヌに来ることができる優秀な監督がいるのではないでしょうか。もしご存知でしたら遠慮なく教えてください。

ーー自分なんかが提言するのはおこがましいのですが……(笑)。

フレモー:どんな人でも私に対して助言をすることは可能です。最終的に決めるのは私ですから(笑)。

ーーいま日本で勢いのある若い才能ということでいうと去年『溺れるナイフ』という作品を撮った山戸結希監督、そして個人的に推したいのは『退屈な日々にさようならを』という作品などを撮っている今泉力哉監督です。

フレモー:(メモを取りながら)私たちはこのようにカンヌで仕事をしています。集団でこういった情報を得ながら、私が最終的にすべてを決断するわけなのです。もちろんカンヌでも間違いがあります。間違ったということは、何かを試みて挑戦してみたということです。カンヌで重要なのは、これまで地理的に知られていなかった場所、そして知られていなかった監督の名前を挙げるということなのです。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『リュミエール!』
東京都写真美術館ホールほかにて公開中
監督・脚本・編集・プロデューサー・ナレーション:ティエリー・フレモー(カンヌ国際映画祭総代表)
製作:リュミエール研究所
共同プロデューサー:ヴェルトラン・タヴェルニエ
音楽:カミーユ・サン=サーンス
映像:1895年~1905年リュミエール研究所(シネマトグラフ短編映画集1,422本の108本より)
原題:LUMIERE!/2016年/フランス/フランス語/90分/モノクロ/ビスタ/5.1chデジタル/字幕翻訳:寺尾次郎/字幕監修:古賀太
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協力:ユニフランス
(c)2017 - Sorties d’usine productions - Institut Lumiere, Lyon
公式サイト:gaga.ne.jp/lumiere!/

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