作品の出来は超一級、でも興収は停滞 『猿の惑星』シリーズのジレンマ

『猿の惑星』シリーズのジレンマ

 ところが、批評面では前作に引き続き賞賛を集めている今回の3作目『猿の惑星:聖戦記』は、アメリカの国内興収でも、世界興収でも、前作から約30%のダウン。新シリーズ1作目『猿の惑星:創世記』と同じ水準の結果となってしまった。日本では前作『猿の惑星:新世紀』の時点で下降傾向が始まっていたので、一概に国外と国内のリアクションを同一視することはできないが、いずれにせよ、『猿の惑星』の新シリーズはオリジナル・シリーズと同じ道を歩み始めているともいえる。現在のシリーズは今回の『猿の惑星:聖戦記』で一区切りがついたことになるが、主演のアンディ・サーキスは、この先も3作品、さらにはそれ以上の続編が製作される可能性を示唆している。作品が強度を増せば増すほど、猿への共感度を要求されるという本シリーズのジレンマを、今後いかに乗り超えていくのか? シリーズのファンとしても、製作陣からの鮮やかな「正解」を期待したい。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
全国公開中
監督:マット・リーヴス
出演:アンディ・サーキス、ジュディ・グリア、ウディ・ハレルソン
配給:20世紀フォックス映画
(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/saruwaku-g/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる