櫻井翔のコメディセンスは想像を超えていたーー『先に生まれただけの僕』制作陣インタビュー

『先に生まれただけの僕』制作陣インタビュー

「リアルでないといけないのはエピソード」


――蒼井優さん演じる鳴海に反発的な現代社会の教師、瀬戸康史さん扮する人見知りな英語教師など、鳴海校長以外の先生方も濃いキャラクターばかりですね。

福田:このドラマを描くにあたり、実際に学校の先生をしてらっしゃる方に20~30人ぐらいお会いしました。それでお話を伺っていると、自分がまるで知らなかったことが次々に出てくるんです。例えば、北海道で校長先生をしている友達に会いに行ったときに、「教頭先生は?」と聞いたら、「メンタルでお休み」と言うんですよ。僕はその言葉に驚いてしまって。

――このドラマの中でも先代の校長先生が「メンタルで辞職」という設定になっていますね。

福田:そうなんです(笑)。実際に先生をやってらっしゃる方々からお話を伺うと、「なんだそれ?」と思うことばかりが出てくるんです。先生によっては日本の教育と世界の教育を比べて語る方もいらっしゃれば、鉄パイプを持った3人の生徒に囲まれて、ここからどう逃げるかを必死で考えたと熱弁する先生もいて。本当に学校によってさまざまだったのですが、その中で一番印象的だったのが、ある先生の「生徒は僕のことを人間だと思っていませんから」という発言。一瞬、聞き捨てならないことを聞いたような気がしたんですが、(笑)、要するに、学校の先生にもプライベートがあって、じつは昨日の夜に彼女にフラれているかもしれないし、母親や父親が病気で寝込んでいるかもしれない。でも、教壇に立ったときに、生徒はそんなことはまったく知らないわけです。なので、その先生の「生徒は僕のことを人間だと思ってませんから」という言葉を聞いたときに、これは学園ものだけど、よくある破天荒な先生がやってきて、生徒と向き合うようなものではなく、先生をメインにした話にしようと思いました。そうなると当然、先生にもキャラが必要なのですが、僕が取材でお会いさせていただいた先生方がみなさん個性的だったので、そういった意味では違和感なく作っていけました(笑)。

――福田さんによる丹念なリサーチによって、リアルな教師像が生まれたのではないかと思いますが、水田さん的にはどう感じましたか?

水田:教師像がリアルというよりは、リアルでないといけないのはエピソードなんですよね。でも、そのエピソードもさすがの取材力というか、すごくリアリティがありました。

福田:本当に今回の取材で初めて知ったことが多くて。保健室で薬を出せないというのも初めて知ったし、保健室に来る理由も今はメンタルな部分が多いというのも知らなかったので、学校も大変だなって思いました。

水田:そういったエピソードが単におかしい、面白いじゃなくて、視聴者の方に少し考えていただける要素があるのが福田さんの脚本の力ですよね。というのは、ドラマの中にリアルな問題を発見するだけでなく、我々はその先を行かないといけないというか。つまり、ドラマに出てきた問題を先生たちはどう解決するのか、そしてご家庭ではそれをどう受け止めるのか、進学実績を上げ、志願者を増やすには、具体的には何をすればいいのかということをドラマとして表現していかないといけないわけです。ドラマは当然、3カ月の物語ですから、ある程度、短時間に何かが変わるのですが、一番変わるべきなのは教師だというのは、福田さんから最初にご提案いただいたことなのです。「教師が変われば生徒が変わる、生徒が変わると学校が変わる」そこに集約していこうというという話になり、福田さんの脚本を読むだけで、「なるほど!」とうなずくところがたくさんありました。あとはそれを俳優の体を通して具体的に表現していくだけ! 俳優陣には福田さんの脚本に負けないように頑張ってもらいました。

――水田さんは演出面でこだわられたことはありますか?

水田:芝居をしやすい環境を作ることです。

福田:今回、わりと早めに脚本を書いたので、よく撮影現場にお邪魔していたんですけど、セットの作り込みがすごいんですよ。職員室にある机も先生それぞれの個性に合わせて作られているし、引き出しを開ければ中身も個性に合わせてある、何気ない下校シーンで使う自転車も映りもしないのに50台全部に(ドラマの中での高校の名称)京明館高校というステッカーが貼ってあるんです。ここまで作られていると、役者さんも役に入りやすいだろうし、それを水田さんの指示ではなく自主的に行われたチームのみなさんの努力を惜しまない姿勢は本当にすごいなと思いました。

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