初登場7位のスマッシュヒット『ドリーム』が日本の洋画業界に残した宿題

『ドリーム』が日本の洋画業界に残した宿題

 昨年度のアカデミー賞作品賞ノミネート9作品のうち、主人公が黒人の作品は3作品。そのうち、最も日本での知名度があるデンゼル・ワシントンが主演(兼監督)した『フェンス』は結局配信とソフトのみでのリリースとなった。今後、社会情勢からいっても、人口における人種の比率の変化からくる商業的要請からも、黒人に限らず、ヒスパニック系、アジア系などの有色人種の役者が主人公(や主人公のパートナー)の作品はますます増えていくことだろう。また、現在のトランプ政権下において、ハリウッド作品は当分のあいだは「政治性」が強まっていくだろうし、それをエンターテインメントとしてより広く深くアピールするために「コメディ」の要素もより重要になっていくだろう。今年に入ってから発表されたアメリカの映画やドラマにも、その兆候ははっきりと現れているし、もはや、ヒット作の半分近くは女性が主人公の作品だ。そうしたアメリカのエンターテインメント界の不可逆な大きな流れは、必ずしも日本の観客全般に無理やり押しつけるようなものではないかもしれないが、少なくとも観客よりも「作品に近い」ところにいる配給や宣伝、そしてメディアの人間には、早急な意識の変化が求められている。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『ドリーム』
TOHOシネマズシャンテほか全国公開中
監督:セオドア・メルフィ
脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
製作:ドナ・ジグリオッティ、ピーター・チャーニン、ジェノ・トッピング、ファレル・ウィリアムス、セオドア・メルフィ
音楽:ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォールフィシュ
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、ジム・パーソンズ、マハーシャラ・アリ
配給:20世紀FOX映画
(c)2016Twentieth Century Fox
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie

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