イ・ジョンジェら、韓国映画界の実力派が演技バトル! 『オペレーション・クロマイト』の心理戦

『オペレーション・クロマイト』の心理戦

 そんな心理戦を描いた本作は、中盤のあることをきっかけに堰を切ったように銃撃戦へと発展していく。後半は心理的なシーンとアクションシーンが交互に現れるのだ。

 このほか、脇を固める俳優たちにも注目したい作品でもある。冒頭に現れるのは、『新しき世界』でイ・ジョンジェとも共演したパク・ソンウンであるし、見るからに暖かい雰囲気を感じさせる俳優、パク・チョルミンは、やはり情に訴える演技をしていたし、韓流ドラマファンには『私の名前はキム・サムスン』などでお馴染みのキム・ソナや、『IRIS -アイリス-』ではイ・ビョンホンのライバルを演じたチョン・ジュノなどのベテランから、『オクニョ 運命の女』のチン・セヨンまで、今をときめくスターたちが揃っている。

 そして、忘れてはならないのが、マッカーサーを演じたリーアム・ニーソンだろう。

 もっとも、このマッカーサーと、イ・ジョンジェ演じるハクスには、この映画の核となるある物語が存在する。そこが、感動を呼ぶのか、ちょっとおとぎ話のように感じるかは、この映画の分かれ目であるようにも思う。

 戦争映画を見るときの基準は難しい。もう二度とこんなことは起こってほしくないし、起こってほしくないということを描いているものを見たいというのが本音であるが、その国の置かれた歴史によっても感情は違うだろうし、同じ国の中でも分かれるものだろう。

 特に、この仁川上陸作戦が1950年に実際にあったことをどうとらえるかで、韓国国内でも意見は割れたという。特に、マッカーサーの描き方によって、その意見が割れることになったとも言われている。ただ、イ・ジョンジェ自身は、こうした意見に対して、この映画は戦争映画ではなく、激しい頭脳戦を描いたスパイ映画であると語っているそうだ。

 私自身も、この文章でも書いてきたが、この映画のもっとも大きな見どころは、ハクスとゲジンの息つく暇もないほどの心理戦にあると思う。韓国映画界を支える達者な俳優たちの演技バトルをぜひとも堪能してほしい作品であることは間違いない。

『オペレーション・クロマイト』予告編

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『オペレーション・クロマイト』
9月23日(土)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋
10月7日(土)より、ユナイテッド・シネマアクアシティお台場ScreenXほか順次公開
出演:イ・ジョンジェ、イ・ボムス、リーアム・ニーソン、チン・セヨン、チョン・ジュノ、パク・チョルミン、パク・ソンウン、ジョン・グライス、秋山成勲
監督:イ・ジェハン
脚本:イ・ジェハン、イ・マニ
配給:クロックワークス
2016/韓国/カラー/シネスコ/デジタル上映/ドルビーSRD/110分
(c)2016 TAEWON ENTERTAINMENT. All Rights Reserved
公式サイト:http://pacific-war-movie.com/operationchromite

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