Netflix版『デスノート』はなぜ原作と大きく異なる物語に? アダム・ウィンガード監督×マシ・オカ対談

Netflix『デスノート』インタビュー

 マシ・オカ「僕の立ち場は、原作者である大場つぐみ先生の声を伝えること」

ライト・ターナー(ナット・ウルフ)、リューク

ーー確かに、映画冒頭と終盤ではライトの成長が顕著に現れていました。

マシ・オカ:それはやはり、アメリカ映画らしい部分ですよね。逆に本作のラストシーンで描かれているライトの心境は、原作で言う一番初めの彼と同じような気がします。そういう意味ではアダム監督のオリジンストーリー、ライトの誕生の物語なんですよね。

ーーそんなライトですが、原作では自身にとって不都合な者を容赦無く殺していますよね。本作では罪のない人は殺さないように努めたり、ルール89“破棄”「(名前を書いた人がそのページを破棄すれば、対象者は死なない」)が作られていたりと、やや性格がマイルドに感じられました。

ウィンガード監督:原作のライトというキャラクターを、本作ではライトとミアの二人に分けています。もし、一人の人間がデスノートを手にして力を得たらという世界ではなく、カップルである男女二人が“キラ”という現象を生みだしたらどうなるかという物語を描きました。彼らの関係性は“デスノート”のメタファー(隠喩)になっています。デスノートと同じように、互いに依存しすぎると崩壊していくんですよ。彼女のミアは、原作の中のライトにとても近いキャラクターです。本作のライトは、原作よりも遥かに無邪気でナイーブなところがあるのですが、物語の中で徐々に自分というものを見出していきます。原作では超天才的な人物でしたが、本作のライトは最後の方でやっとデスノートの達人になるんですよ。

ライト・ターナー(ナット・ウルフ)、ミア・サットン(マーガレット・クォーリー)

ーー原作とは大幅に変わっている点が目立つ一方で、原作や日本への愛を感じるシーンも多く観られました。その点はマシ・オカさんが監督にアドバイスしたのですか?

マシ・オカ:僕ひとりの意見ではなく、皆さんのアイディアです。今回、僕の立ち場は、ほかのプロデューサーさんやアダム監督へ、原作者である大場つぐみ(作画・小畑健)先生の声を伝えることでした。また僕個人の目的としては、先生方に納得していただける作品を作ることだったんです。ファンの方々のことを一番理解しているのは先生方だと思うので、そうすれば原作ファンにも受け入れていただけるかなと。先生方から内容やキャラクターの方向性を伺った上で、アダム監督には微調整していただきました。また、先生方にはキャラクターの分岐点となる部分の説明や脚本をその都度翻訳して渡しています。ただ、やはりアダム監督のビジョンもあるので、そこはご相談して、すべて承諾を頂きました。先生方から信頼をいただけたのは、ビジョンが明確にあって、作品に対してのリスペクトと愛情があったからこそなのかなと。

アダム・ウィンガード監督

ーーマシ・オカさんが、原作者と監督をはじめとした製作陣を繋いでいたのですね。

マシ・オカ:そうですね。日本文化はもちろんのこと、バイリンガルでもあり、バイカルチャーでもあったので、何か違和感があった際には必ず先生方と話し合いました。僕自身、架け橋になりたかったので、仲介役を買って出たと言いますか。アダム監督やほかのプロデューサーさんたち、スタジオ側からは口のうるさい奴だと思われていた気がしますね。実際、たまに邪魔者扱いされてました(笑)。

ーー(笑)。日本の文化という点では、特にリュークの浮世絵が印象的でした。

ウィンガード監督:リュークというキャラクターは、遥か昔から存在しています。古代からずっと人間の生き様を見続けていることを表現するために、美術担当が浮世絵というアイディアを出したんです。また、リュークだけではなくデスノート自体も長い年月を経て、様々な人間の手を渡り歩いた末に、ライトの元に辿り着きました。そういう背景や時の経過もあわせて、観客に伝えています。実際に小道具のノートをめくってみると、様々な言語で、色んなことが書き込まれているんですよ。ものによっては存在しないような言語まで記述されています。そういった細部にまで、心血を注いでいるのでぜひ日本の皆さんにも注目して欲しいですね。

(取材・文・写真=戸塚安友奈)

マシ・オカ、アダム・ウィンガード

■配信情報
Netflixオリジナル映画『Death Note/デスノート』
世界190ヶ国で同時配信中
Netflix:https://www.netflix.com/jp/

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