映画興収に52年ぶりの珍事 年間トップ10に「夏の日本映画」が1本も入らない2017年

 今回過去50年間以上の興行成績を精査してみてわかったのは、「大ヒット作が続いた2016年の反動が2017年にきてしまった」というなんとなくの印象論は間違いであること。近年、日本映画はアニメ作品への依存度が急速に増しているが、アニメ作品は実写作品以上に観客の目がシビアで、興行的には博打的要素が強い。新作が1本予定されているとはいえ、今後もポスト・ジブリ、ポスト宮崎駿という課題はずっとついてまわるわけだが、それだけでなく、実写日本映画の制作環境や作品の質や商品価値(一番手っ取り早いのはヒット作のフランチャイズ化だが、その成功例が出せないでいる)の根本的な底上げができない限り、来年以降も夏が来るたびに博打を繰り返すだけになってしまうだろう。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

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