『過保護のカホコ』好評価の理由は遊川脚本にあり 80年代ドラマ想起する竹内涼真の男の子像

 『過保護のカホコ』も、昔の遊川だったら、序盤はもっと母親の嫌なところや、カホコのダメなところをこれでもかと描き、不快感を煽っていただろう。だが、今の視聴者は傷つきやすく不快な物語に付き合ってくれない。だからカホコも第一話の終わりで、すでに成長モードに入っている。

 興味深いのは、そういった時代の変化に対応する際に『オヨビでない奴!』を筆頭とする80年代のコメディドラマで書いていた軽薄な男の子の内側にある優しさと強さを、美しいものとしてストレートに打ち出す作風が、遊川の中で復活したことだろう。

 このようなボーイミーツガールの物語、男と女がぶつかり合いながら成長していく姿を肯定的に描けるのは、遊川の圧倒的な武器である。

 とはいえ、最後までどうなるかわからないのも、また遊川和彦である。第5話では、麦野に母親に捨てられた辛い過去があることが判明した。

 このことが悪い方向に転ばなければいいのだが……。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『過保護のカホコ』
日本テレビ系にて毎週水曜夜10時~
出演:高畑充希、黒木瞳、竹内涼真、佐藤二朗、中島ひろ子、梅沢昌代、濱田マリ、夙川アトム、西尾まり、久保田紗友、三田佳子、西岡德馬、平泉成、時任三郎
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ
演出:南雲聖一、日暮謙、伊藤彰記、明石広人
制作協力:5年D組
(C)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/kahogo-kahoko/

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