国内外における『ワンダーウーマン』への温度差が今後の日本洋画界に影を落とすもの

『ワンダーウーマン』国内外の温度差

 洋高邦低が続く2017年の映画興行だが、前週初登場1位の『HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY』に続いて、今週も実写日本映画が初登場1位を飾った。東宝、アスミック・エースの共同配給作品『関ヶ原』の土日2日間の動員は31万2400人、興収3億9600万円。この成績は、今年の実写日本映画の初週週末成績としては『銀魂』『忍びの国』『相棒 劇場版IV』に次いで4番目に高い数字となる。いずれにせよ、昨年の『シン・ゴジラ』のように突出したヒット作が出ていないのが、今年の実写日本映画の傾向である。

 アメリカ国内だけで興収4億ドル超え、世界興収では8億ドル超え、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』をはるかに超えてDCエクステンデッド・ユニバース最高記録を更新するだけでなく、2002年のサム・ライミ版『スパイダーマン』をも上回り、アメコミ・ヒーロー作品1作目としての史上最高を既に打ち立てている『ワンダーウーマン』。当然、日本での興行でも大きな期待が寄せられていたが、土日2日間の動員は18万2000人、興収は2億6700万円で初登場3位。全国596スクリーン(ちなみに『関ヶ原』は360スクリーン)という大規模で、本国の公開から3ヶ月近く遅れて満を持して公開されたことを考えると、少々不甲斐ない数字でのスタートとなった。

  『ワンダーウーマン』の製作は、今後の映画界にとって大きな試金石となるものだった。一つは、この10数年間ハリウッドを席巻してきたアメコミ・ヒーロー映画において、久々に製作された実写の女性ヒーロー作品であること。そしてもう一つは、それが初の女性監督による作品であったこと。過去には男性監督の手によって『スーパーガール』『キャットウーマン』などの作品も作られてきたが、批評面においても興行面においても惨敗。そんな負の歴史を覆して、パティ・ジェンキンス監督による『ワンダーウーマン』が批評的に大絶賛で迎えられて、世界各国で大ヒットを記録したことについては、DCのライバルであるマーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギも賛辞を送っている。

 今回の『ワンダーウーマン』のヒットによって、今後のアメコミ・ヒーロー映画の世界で間違いなく起こるとされているのは、女性ヒーローが主役となる作品の製作ラッシュだ。2019年には『キャプテン・マーベル』の公開が決定済み。さらに、『ワンダーウーマン』の続編はもちろんのこと、『スパイダーマン』に登場する女傭兵シルバー・セーブルと女怪盗ブラック・キャットを主人公にした『シルバー&ブラック』、『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインを主役とする『ゴッサム・シティ・セイレーンズ』、『バットガール』などの企画が既に具体的に動いているとされている。

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