姫乃たま × プー・ルイが語る、“暗黒女子”とアイドルの裏側 「BiSは不幸を糧に大きくなってきた」

姫乃たまとプー・ルイが語る、“暗黒女子”

プー・ルイ「(BiSは)メンバー同士でチューばっかしてますよ(笑)」 

ーー『暗黒女子』も舞台は、女子高ですよね。女子だけしかいない環境って違和感がありませんか?

プー・ルイ:女子校である中学校に入学した時が一番びっくりしましたね。小学校までは当たり前のように男の子がいる学校生活を送っていたので。慣れちゃえば感覚も麻痺しますし、女子だけの空間が普通になっちゃうんですが、最初はキモって思いました(笑)。ちょっとしたホラーですよ。『暗黒女子』で描かれている世界ほどではないですが、こういうドロドロは女子特有ですよね。男子校じゃ絶対に起きないスクールカーストと言いますか。

姫乃:そうですね。忘れようとしていた“あの頃”が詰まっていましたね……。

プー・ルイ:争いは嫌いなんですか?

姫乃:すこぶる苦手です。それ以前に全員で同じ制服を着ること自体、怖いんですよ。それによって思春期の女の子たちの間にあるヒエラルキーが強調されるじゃないですか。嫌な思いをした経験がある人もたくさんいると思うんですけど、大人になるにつれて遠ざけてきたそういう気持ちを、『暗黒女子』を観てふと思い出しました。

プー・ルイ:そうなんですね。私はミーハーなので、女子高のスクールカースト争いに自ら入っていくタイプでした。トップを目指していたのですが、大抵は頂点のグループの下っ端でしたね(笑)。まさに『暗黒女子』でいう、飯豊(まりえ)さんが演じた(白石)いつみ様の配下という感じです。“白石いつみ”にはなれないんですよ。脇役系で存在してました。

姫乃:私はいじめられっ子だったので、争いに参戦するレベルにも達してなかったですね。

プー・ルイ:でも私、地味でしたよ。「地味ルイ」って頂点のギャルたちから言われてました(笑)。あとこの作品には、男性から見た女子高の世界や理想像が詰まっている印象を受けましたね。リアルに寄せたらもうちょっと視覚的に汚いかな、と。実際は言葉遣いも荒いですし。女子高の女は外に出ると変わるんですよ。

姫乃:そういうものですか。大学だと全然喋らないから知らなかったです。

プー・ルイ:大学だとまた違うんですよね。学校以外にも生活の軸があるから、世界が広いんです。多分、大学は女子校も共学も大差ないんですが、中学、高校の女子校男子校はやっぱり異質感がすごく強い。文化祭で知り合ったとかでたまに男の子文化が入ってくると、態度が変わるんですよ。その時期から女は女なんだなっていう。でも、『暗黒女子』の日常版みたいな出来事が、学校の中でも日々起こっています。誰がカーストの頂点に立って、誰を排除して、みたいな。だから、そういう世界を生き抜いてるので、女子校の女子はたくましいんですよ。

姫乃:それは過酷な……。ルイさんが長くグループで生き残っている理由がわかった気がします。女子高生って学校内で形成されるヒエラルキーだけじゃなくて、学校の外にいる人たちの目線も意識しているじゃないですか。『暗黒女子』の物語も学校内で完結しているようですが、聖母マリア女子高等学院に通う彼女たちもまた、外の世界を意識している印象がありました。特に印象的だったのが、清野(菜名)さん演じる高校生作家の高岡志夜が放つ、「大人になってからの1年だったらいくらでも差し出せるけど今の1年は差し出せない」というセリフです。女子高生である自分の価値の高さを理解していることを隠さないところが面白いな、と。作品自体も、女優さんたちと同世代の女の子たちはもちろん、若い女の子同士がイチャイチャしてるのを見たい男性ファンにも向けて作られていると思うので、外界からの視線を意識したセリフがメタ構造になっているのも面白かったです。でも私自身は、女子同士の触れ合いがあんまり得意じゃなくて、映画の中で観る分には素晴らしいですけど、実際にやるのは苦手です……。

プー・ルイ:わかります。でも、グループ内ではありますね。メンバー同士でチューばっかしてますよ(笑)。男がいないので、互いの欲求や寂しさをキスで解消しています。妥協と言いますか……(苦笑)。仕事ではなくて、楽屋や移動中など完全にプライベートでしていますね。マネージャーさんの前でも普通にチューしてますよ。対バンもやっぱアイドルばっかりで、合コンとかもないんですよ。もうちょっと売れれば、そういうパイプがあるかもしれないんですが、これぐらいの地下アイドルだと何もないんですよね。

姫乃:えっ、なんですって! 私は基本的に楽屋にいないので誰とも接触しないですね……。

プー・ルイ:そっか、一人だと楽屋に敵ばっかですもんね。

姫乃:敵ばっかりっていうか……怖いですよね。やっぱりソロアイドルは、グループアイドルには絶対に勝てないんですよ。一斉に殴られたら絶対負けちゃうじゃないですか。

プー・ルイ:そんなことないでしょ。強い奴が強い。

ーー強い者が生き残りますよね。『暗黒女子』も最も強かった者が最後にどんでん返しを起こすじゃないですか。衝撃的な結末でしたがどういう印象を受けましたか?

姫乃:お話も衝撃ですが、その終盤に差し掛かった部分から、映像自体がフェティッシュな方向に寄っていくので、そっちのほうが衝撃でした。前半は青春ドラマっぽい爽やかな感じだったので、ギャップが凄まじかったです。私は“ウェット&メッシー”というジャンルの、女の子が食べ物などで汚れるのを見て性的な興奮を覚えるというフェチを持っているので、こんなメジャーな作品で綺麗な女優さんたちが、最後の最後にやってくれたことがすごく嬉しくかったです。ありがとうっていう気持ち。

プー・ルイ:そういうの聞くと、私の性癖は普通だなと思います(笑)。私も、想像していた結末とは全く違いましたね。ゾンビや幽霊などのホラー映画は苦手なんですが、こういう身近に潜む人間的な怖さは大丈夫なので、面白かったです。途中まではそれぞれの不幸さに焦点を当てていて、現実的な印象があったんですが、ラストの非現実的なホラー展開に全部持っていかれてしまって。あまりの闇の深さに、逆にスッキリとした爽快感がありましたね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる