テレ東深夜ドラマ枠をジャックした本格ホラー、『デッドストック~未知への挑戦~』がヤバい

本格ホラー『デッドストック』がヤバい!

物語の設定がヤバい

 『デッドストック~未知への挑戦~』の初回を見て最も感心したのは、その物語設定の巧みさ。昨年、テレ東は神谷町のオフィスから六本木のオフィスへ社屋を移転したばかりだが、本作の主要舞台はその神谷町の旧オフィスの倉庫。オフィス引っ越しの際に発掘された大量の番組素材VTRを整理する「未確認素材センター」に配属されたベテランディレクター(田中哲司)と若手ディレクター(早見あかり)と新人AD(村上虹郎)の3人が、本作の主要キャラクターとなる。3人は好調が続くテレ東の「いい流れ」から取り残されて、物理的にも旧オフィスに居残りとなってしまったドロップアウト組というわけだ。

 毎回、その過去の素材VTRに収められた放送NGとなった映像からエピソードが始まるのだが、その設定すべてがいかにも「ありそう」なのがいい。また、どうやら田中哲司演じるベテランディレクターがVTRの整理をしているのには、若手2人は預かり知らない「別の目的」があるようで、それがストーリーの縦軸となっている。

オープニング曲もエンディング曲もヤバい

 本来ホラー作品に主題歌なんていらない、というのが持論ではあるのだが、『デッドストック~未知への挑戦~』はオープニング曲とエンディング曲もいい。オープニングはAKLO×JAY'EDによる「Different Man」。トロピカルハウスを通過した最新のプロダクションが施された流麗なボーカル&ラップ・トラックで、CMプランナーの長久允が手がけたオープニングタイトルと相まって、ともすれば「野暮ったいもの」と誤解されがちな日本のホラー作品のイメージを刷新していく。

 エンディングはUAの「Moor」。ご存知のように本作の主人公の一人、村上虹郎の母でもあるUAだが、(ホラーなので当然だが)大体において大変な目にあって憔悴しきっている村上虹郎を、まるで慰めるかのように最後に流れてくる優しいメロディと母親=UAのたおやかな歌声は不覚にもちょっと感動的で、毎回ホラー作品らしからぬ不思議な後味を残してくれる。

最終回がヤバそう

 そんないろいろとヤバい『デッドストック~未知への挑戦~』なのだが、なんとその最終回には、事件後のオウム真理教に密着した『A』『A2』や、ゴーストライター騒ぎの後の佐村河内守に密着した『FAKE』などの異色ドキュメンタリー作品で知られる森達也が監督として登板することが発表されている。日本における(わりと安易な)フェイク・ドキュメタリー・ブームの発信源となったこのテレ東深夜ドラマ枠に、真打ち登場というか、いろんな意味で本当は登場しちゃいけない人が登場してしまう、そんなタブー感に満ちた仕掛け。スクリプトドクター三宅隆太と、本来は「スクリプト」の正反対にある「ドキュメンタリー」ディレクター森達也という、後にも先にもなさそうな禁断のタッグに、今から胸騒ぎを覚えずにはいられない。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■放送情報
『デッドストック~未知への挑戦~』
テレビ東京にて、毎週金曜深夜0:52〜放送
出演:村上虹郎、早見あかり、筒井真理子、中村優子、田中哲司
脚本:加藤淳也、三宅隆太、継田淳
監督:権野元、三宅隆太、森達也
オープニングタイトル:長久允
オープニング曲:AKLO×JAY’ED「Different Man」(TOY’S FACTORY)
エンディング曲:UA「Moor」(SPEEDSTAR RECORDS)
音楽監督:遠藤浩二
音楽:LEO今井
プロデューサー:五箇公貴、北村圭、向井達矢
チーフプロデューサー:大和健太郎
制作:テレビ東京/ラインバック
製作著作:『デッドストック~未知への挑戦~』製作委員会
(c)「デッドストック〜未知への挑戦〜」製作委員会
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/deadstock/

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