ミニシアター運営をビジネスにするポイントは? UPLINK代表・浅井隆が語る、これからの映画館

UPLINK代表・浅井隆インタビュー

 映画のデジタル化がもたらしたもの

UPLINK X スクリーン2

――配信サービスが公開と同時に行われる場合、映画館の観客減少に繋がることにはならないのでしょうか。

浅井:アップリンクで上映しているような作品は公開劇場が限られている分、住んでいる場所や時間によって、観たくても観ることができない方が一定数以上いると感じています。配信サービスが普及すれば、映画館に足を運ばなくなるんじゃ……という意見はありますが、そもそも映画に触れてもらえなくなることの方が問題だと思いますし、配信サービスで観た方が今度は映画館に足を運んでくれるかもしれない。配信サービスを頭から否定するのではなく、ひとつの選択肢として、映画に関わる人すべてにプラスになればいいと思います。だから、「UPLINK Cloud」も配信サービスというよりも、ネット上に新しい“映画館”をオープンさせたという意識ですね。カンヌ映画祭でNetflix作品が来年以降コンペ選考対象になるかどうかと話題になっていましたが、僕はすべての原理主義には反対です。映画は映画館で見なければダメだという、映画館原理主義とか。これだけ新しいサービスが普及しているわけですから、それを柔軟に受け入れることが大事だと考えています。

――Netflixをはじめ、配信のオリジナル作品が続々と増えています。

浅井:配給会社が全国の映画館と交渉して作品をブッキングする、宣伝会社がメディアに対して宣伝するなど、劇場で公開する作品にはまだまだアナログな部分がある。一方で、NetflixやAmazonは、世界中の映画祭で、話題になったインディペンデント映画、特にドキュメンタリー作品をポンポン買って一気に世界に提供できるプラットフォームがあるわけです。劇場で公開するからにはお客さんに来てもらわないといけないから、宣伝が必要になる。当然そこでお金もかかる。それが、ほとんどかからず、自社のプラットフォームで売り上げの100%を確保できるというというのは、これからも配信オリジナル作品は増えていくでしょう。

――映画の製作から鑑賞方法まで、映画のデジタル化は何をもたらしたのでしょうか。

浅井:映画のデジタル化は、作る側で言えば「才能の規制緩和」と僕は捉えています。昔はフィルムが高価だったし、現像しなければ映像が映っているか確認できなかった。プロフェッショナルで予算がある人たちだけしか映画は作れなかった。デジタル技術によって、その敷居がなくなった。誰でも映画を作れる時代になった。そして今度は映画館もカフェを作るように作れる時代になった。僕は、映画館やネットでの配信など様々な鑑賞形態がある中で、多くの人が映画に触れ、新しい楽しみ方をしてくれればと思います。

(取材・文=石井達也)

■浅井隆
アップリンク代表、未来の映画館プロデューサー、webDICE編集長

■UPLINK
近日公開作品
7月1日〜
『イップ・マン 継承』、『草原の河』、『空(カラ)の味』
7月15日〜
『ケイト・プレイズ・クリスティーン』
7月22日〜
『狂覗【きょうし】』
8月5日〜
『リベリアの白い血』、『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』
UPLINK Cloud:http://www.uplink.co.jp/cloud/
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/

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