平日主婦パワーで『昼顔』が週間トップ 日本特有の「大人向け女性映画」の傾向

『昼顔』『あなそれ』に共通する時代の空気

 その点、『昼顔』で描かれている物語世界は、舞台が日本であるということを差し引いても、現実と地続きで、性的にも物質的にも慎ましく、男にとってもそれなりに身につまされる生々しいもの(もし『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に身につまされる男がいるなら、それはそれで会ってみたいが)。両作品を続けて観ると、どちらがいいとかそういう話ではなく(演出面では『昼顔』の方が明らかにテクニカルで洗練された作品だが)、日本人の一般的な映画(物語)への趣味嗜好というものは、改めて西欧とはかけ離れているなぁと感慨を覚えずにはいられない。日本人がアメリカのコメディ映画をちゃんと理解するのは難しいだとか、ホラー映画への愛着がアメリカ人に比べて薄いだとか、映画好きの間ではよくそういう話がされるけれど、日米で現在最も大きなギャップがあるのは、もしかしたら『昼顔』のような「大人向け女性映画」というジャンルかもしれない。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『昼顔』
全国上映中
監督:西谷弘
脚本:井上由美子
音楽:菅野祐悟
出演:上戸彩、斎藤工、伊藤歩、平山浩行
企画・製作:フジテレビ
配給:東宝
制作プロダクション:角川大映スタジオ
(c)2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社
公式サイト:http://hirugao.jp/

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