『22年目の告白』と『昼顔』がトップ2 日本映画反撃の鍵を握る職人監督たち

『22年目の告白』『昼顔』の快進撃に期待

 映画の世界には「職人監督」という言葉がある。作品の中に必要以上に自身の主張や趣味を反映させず、与えられた題材やキャストや予算の中でベストを尽くし、それでもスクリーンに否応無しに漂っている作家性。そのような「いい意味」で使われることが多い言葉であるが、ある程度キャリアを積んだ監督の中で、本当に「職人監督」と呼ぶに値する存在が日本のメジャー作品の界隈に何人いるだろうか? 実際には、いくつか突出した作品は残しているものの、題材や環境によってモチベーションが影響されるのか、作品によって大きく出来不出来が左右される監督。どんな題材の作品でも無遠慮に自身の色に染め上げてしまう監督(作品がヒットし続ければそれも許されるが)。あるいは、何本撮ってもほとんど誰からも名前を認識されず、粛々と与えられた企画をこなしてやがて消えていく監督。そのような監督が大多数を占めているというのが現状だ。

 そんな中にあって、入江悠監督や西谷弘監督は数少ない「職人監督」と呼ぶに値する、あるいは今後、敬意を込めてそう呼ばれるようになる可能性が高い監督だと自分は考えている(入江監督に関しては『SR サイタマノラッパー』シリーズの印象が強い人も多いと思うが、『同期』、『ジョーカー・ゲーム』などサスペンスものも継続的に手がけてきた)。もちろん一人の映画ファンとして、それぞれの監督の、自分発信による、表現者として思う存分に羽を伸ばした作品も観てみたいという気持ちもあるが、日本のメジャー実写作品における貴重な人材である「職人監督」としての両者の仕事に、引き続き大きな期待を寄せていきたい。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『昼顔』
全国上映中
監督:西谷弘
脚本:井上由美子
音楽:菅野祐悟
出演:上戸彩、斎藤工、伊藤歩、平山浩行
企画・製作:フジテレビ
配給:東宝
制作プロダクション:角川大映スタジオ
(c)2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社
公式サイト:http://hirugao.jp/

■公開情報
『22年目の告白―私が殺人犯です―』
6月10日(土)全国ロードショー
監督:入江悠
脚本:平田研也、入江悠
出演:藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、竜星涼、早乙女太一、平田満、岩松了、岩城滉一、仲村トオル
原作:「Based on the film “Confession of Murder”」
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2017 映画「22年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会
公式サイト:www.22-kokuhaku.jp

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