高橋一生の演技は、なぜもっと観たくなるのか? 『おんな城主 直虎』柴咲コウとの名コンビを読む

高橋一生は“行間案件”の男

 直虎と政次の関係の魅力は、一方が手を差し伸べたらもう一方が拒む、そのもどかしさにある。12話で今川家から戻ってきた政次に裏切りの真意を尋ね、彼の袖を掴もうとした直虎の手を払いのけたのは政次だった。それがきっかけで直虎と政次の敵対関係は始まり、直虎は領主になるわけだが、つまずいて転んだ直虎に差し伸べた政次の手を今度は直虎が拒む。村人と徳政令問題が勃発した14話でも、直虎の行動を止めようとして彼女の手に触れた政次の手を、直虎が払いのける。それ以降、政次は、命を狙われる直虎を助けようとしてタイミングを逸すなど何度ももどかしい行動をとり続けるのであるが、ようやく、18話で、直虎が政次の袖をそっと掴み、話をしようと持ちかけ、政次もそれに乗るのである。

 だが、だからといって彼らは完全に手と手を携えたわけではない。19話で騒いでいる直虎を後ろから取り押さえた政次の手に触れた直虎が、すぐにまたその手を振りほどくように、彼らの手はそう簡単には交わらない。「我をうまく使え、我もそなたをうまく使う」と直虎が政次に言う。火と水のように違う2人は、いつも正反対のことを言いながらも、互いを気遣い、全ては井伊のためという共通認識を持ついいコンビであり続けるのだろう。

 大河ドラマは史実には抗えない宿命ではあるが、井伊家全員から家自体が忌み嫌われていたり、2度も許婚の話が破談になったり、想い続けてきた直虎に嫌われたりと、とことんツイていなかった政次の幸せな日々が頼むから長く続いてくれと心から願っている。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『おんな城主 直虎』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
作:森下佳子
主演:柴咲コウ
制作統括:岡本幸江
プロデューサー:松川博敬
演出:渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/naotora/
写真提供=NHK

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