初登場3位『ゴースト・イン・ザ・シェル』、「母国」日本での興行を世界はどう見た?

『ゴースト・イン・ザ・シェル』日本の興行は?

 記事の趣旨は「アメリカ人が(勝手に)考えているほど、日本の観客はホワイト・ウォッシュ問題を深刻にとらえていなかった」といったもの。ちょっと笑ってしまったのは、「正直に言うと、アジアの他の国の俳優が日本人の役をやるくらいだったら、まだ白人に日本人の役をやってもらった方がマシ」という日本の観客の意見が紹介されていること。今回の主人公の配役が日本であまり問題とならなかったのは、日本でも好感度の高いスカーレット・ヨハンソンだったことが大きかったと個人的には思うが、ハリウッド映画で日本人役を日本以外のアジア人が演じることに関しては、『SAYURI』や『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』などの公開時に日本の映画ファンから失望の声が上がったのも事実。こちらはむしろ、国際的に活躍している若い役者が日本にほとんどいないのが要因と言える。

 ポリティカル・コレクトでがんじがらめになっているアメリカと、少なくとも映画界に関して言うならそれ以前に大きな人材問題を抱えている日本。図らずも、『ゴースト・イン・ザ・シェル』はそんなそれぞれの国の現代的イシューを浮き彫りにすることとなった。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。

■公開情報
『ゴースト・イン・ザ・シェル』
全国公開中
監督:ルパート・サンダース
出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ
配給:東和ピクチャーズ
(c)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.
公式サイト:ghostshell.jp

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