『べっぴんさん』最終週はなぜ“迷走”したのか? 意欲作が浮き彫りにした朝ドラの問題点

 その後、会社を引退した後のすみれたちの生活が淡々と描かれる。

 ドラマを見てきたファンからすれば各キャラクターがそれぞれ幸せに暮らしているところを見られただけで満足だろう。しかし描写は冗長で、今まで積み上げてきたものがガラガラと崩れていったように思う。同時に思うのは芳根京子たち若手俳優が老後を演じたことの弊害で、途中で引退すると言い出した時のすみれたちの年齢が、自分にはさっぱりわからなかった。個々の俳優はムチャ振りに対して、がんばっているとは思ったが、「俳優はがんばっている」と思わせてしまう時点で、フィクションとして崩壊している。

 やろうとしたことは悪くなかった。近年の朝ドラでは意欲作だったと思う。しかし、「対立する敵役を描けない」「無理やり晩年を描こうとする」「主演の若手俳優に老人役を演じさせる」といった近年の朝ドラが抱える問題が、最後に噴き出して無残な終わり方となってしまい、見ている側が「なんか……なんかな」と言いたくなる終わり方だった。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』
制作局:NHK大阪放送局
出演:芳根京子、生瀬勝久、菅野美穂、蓮佛美沙子、高良健吾、谷村美月、百田夏菜子、土村芳、永山絢斗、市村正親、名倉潤、松下優也ほか
作:渡辺千穂
音楽:世武裕子
平成28年10月3日(月)〜平成29年4月1日(土)全151回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土)  午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「べっぴんさん一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『べっぴんさん』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分     
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/beppinsan/

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