『ハードコア』監督が語る、“一人称視点”アクションへの挑戦 「観ていて楽しい感覚を重視した」

『ハードコア』監督インタビュー

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ーー従来にはない革新的な映像作品を作ることは勇気がいることだと思います。

ナイシュラー監督:勇気がいる以前にバカだったというのもあるかな(笑)。もちろん勇気が必要だったし、撮影をスタートしてすぐに「ちょっとこれ、無理かもしれない」と一瞬挫折しそうになった時があったんだ。撮影を進めるのをビビってしまった。これ以降、自分が考えているような方向にはもっていけないんじゃないか、不可能なんじゃないかって。自分も含めて、スタッフはみんな素人で、誰も映画作りに携わったことがない人たちばかりだったからね。でも、“無知は力なり”ではないけれど、知らないからこそみんなで意見をぶっつけあい、その場で色んなアイデアを出しあったからこそ、前に進むことができた。

 そして、最初の数十分撮った映像を見て、ひょっとしたらこれは頑張って続けたらいけるかもしれない、と思えたんだ。なんだかわからないけど引き込まれる、人の目を釘付けにしてしまう力が映像にはあった。そこで、間違いじゃないことを確信することができた。あとひとつは、ちょっと開き直った部分もあったよ。世の中には懲りずに駄作を作り続けている監督もいるから、失敗してもなんとかなる(笑)。世の中にはろくでもない映画がたくさんあるからね。万が一この映画がすごい駄作に終わったとしても、別にそれで人生が終わるわけじゃない。そういう開き直りも若干あったかな。

ーー監督としてのプレッシャーはありましたか?

ナイシュラー監督:自分で自分にプレッシャーをかけるという意味で、これが大コケしたら2作目、3作目はないと思うようにしていたよ。自分はバンドだけじゃなくて、映画監督として今後もやっていきたいと考えていたからね。世の中に出てどうなるかは分からないけど、せめて自分で納得できる映画にしようと意気込んでいた。なにせ2013年の春から始めて、3年間自分の人生を費やしているわけだから、もしも納得のいかないものになっていたら悔しいだろう? それに、やっぱり映画作りっていうのは、2人がしみじみキッチンで座って会話しているだけの映画だとしても、作るのは大変なんだ。特に今回は予算的にもスケジュール的にもタイトだったからね。それでも、一人称で語られる誰も観たことのない作品が、ロシア映画として世界中で公開されるかもしれない、という期待が僕らの1番のモチベーションになった。アメリカでは拡大公開で3000スクリーン近くの規模感で上映されたし、ましてや日本でも公開されるなんて、自分にとっては本当に嬉しいことだし、すごく喜んでるよ。

(取材・文=泉夏音)

■公開情報
『ハードコア』
4月1日(土)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
製作・脚本・監督:イリヤ・ナイシュラー
出演:シャールト・コプリー、ダニーラ・コズロフスキー、ヘイリー・ベネット、ティム・ロス
配給:クロックワークス
提供:クロックワークス/パルコ
字幕翻訳:北村広子
原題:「HARDCORE HENRY」
2016年/ロシア・アメリカ/DCP5.1ch/ビスタ/英語、ロシア語/96分/R15+
(c)2016 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:hardcore-eiga.com

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