『SING/シング』は現代女性の“自立”も描くーーフェミニズム映画としての側面を読む

『シング』は女性の自立も描く

内気なディーバ、少女のミーナ

20170214-sing-sb.JPG

 ティーンエイジャーのミーナは、内気で極度のあがり症。だが、彼女の歌唱力はコンテスト出場者の中でも群を抜いていて、ディーバ的存在として描かれている。

 家族の前でしかまともに歌えなかったミーナが、大勢の前で堂々と歌声を披露できたのは大きな進歩だろう。しかし、他の女性出場者と比べれば、その歩みはまだ小さい。ロジータとアッシュがみずからの意思で人生を決断しているのに対し、ミーナは家族やバスターなど、第三者に背中を押される形でしか行動に移せていないからだ。そのため、見ていてもどかしい気持ちになる場面も多かった。だが、少女のミーナにとっては、自立は時期尚早の課題なのかもしれない。いずれ彼女が自立した女性になるためには、自分ひとりの力で一歩を踏み出せるようになる必要があるだろう。

 上記のコンテスト出場者以外でも、元歌姫で資産家のナナ、老齢ながらも真面目に働くミス・クローリーなど、脇役女性たちが示唆するものも大きい。

 『SING/シング』は、単純に「笑って泣ける」作品だ。しかし、キャッチーに見えるエンターテイメントの裏側で、現代女性がどう自立すべきかが問われているのかもしれない。

■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。
Twitter:https://twitter.com/manyotaso

■公開情報
『SING/シング』
全国公開中
監督・脚本:ガース・ジェニングス
製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
出演:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリーほか
出演(吹替版):内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)、山寺宏一、坂本真綾、田中真弓、宮野真守、谷山紀章、水樹奈々、大地真央
吹替版演出:三間雅文
日本語吹替版音楽プロデューサー:蔦谷好位置
日本語歌詞監修:いしわたり淳治
配給:東宝東和
(c)Universal Studios.
公式サイト:http://sing-movie.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる