木村拓哉と浅野忠信の友情に感動! 『A LIFE』は男の絆を描いた“青春”ドラマだった

『A LIFE』最終回を終えて

 ラストには、沖田がスタッフに最後の挨拶をしていく模様が映し出されていた。暖かい光がさす副院長室、これまでにはない和やかな空気の中で壮大と沖田は、これからの未来を語り合う。沖田が「(ネクタイが)曲がってるよ」と指摘すると、少し曲がっているネクタイを確認した壮大は「曲がってないよ」と反論する。やはり沖田には素直になれない壮大だが、ふたりの中にあったわだかまりは完全に解消されたようだ(次のシーンに登場する時に壮大のネクタイは直っている)。それにしても、最後まで徹底して情けない愛すべきキャラクターを演じきった浅野には、これまでと違った印象を覚えた視聴者も少なくないはず。キャリアは長いが映画俳優としてのイメージが強かった浅野は、このドラマをきっかけにより多くの人々に愛される俳優になれたのではないだろうか。

 その後も沖田は、井川、柴田由紀(木村文乃)、深冬と最後の言葉を交わす。決して別れを惜しんだり、多くの言葉を語らない沖田だが、それぞれの目標を力強い眼差しと優しい微笑みで受け止める。素直じゃない壮大もそうだが、沖田も相変わらずに不器用なまま、それぞれの心境に変化はあったものの、人間としての根っこの部分は変わらないのだろう。そんな言葉にできない沖田の思いを目線と背中で語る演技は、これから一人の俳優としての道を歩む木村拓哉に見事にはまっていたように思う。

  『A LIFE』は、ヒロインの深冬を中心とした恋愛ドラマや、『白い巨塔』のような病院の覇権争いを描いた社会派ドラマだけではなく、沖田と壮大の友情を描く“青春”ドラマという側面もあったのだと思う。途中でタイトルが『A LIVE』に変わったように、仕事や恋愛を通して登場人物の生き様を示していた。そして、登場人物たちのこれからの未来が感じられた最終回、視聴者からはすでに続編を希望する声も上がっている。視聴率的にも成功を収めたドラマなだけに、もしかしたら再び『A LIFE』メンバーのその後が描かれる日が来るのかもしれない。

(文=泉夏音)

■放送情報
日曜劇場『A LIFE〜愛しき人〜』
3月19日(日)よる9時から15分拡大放送
出演:木村拓哉、竹内結子、松山ケンイチ、木村文乃、菜々緒、及川光博、浅野忠信ほか
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/ALIFE/

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